「大分県少年の船」飛行機移動に変更 滞在を1日長く、人数は半減【大分県】

船のデッキに並び、出航の見送りを受ける県少年の船の参加者=1998年7月、大分市

 子どもたちが集団生活をしながら沖縄県を訪れる「大分県少年の船」は本年度、移動手段を飛行機に変えて実施される。これまで使っていた大型客船が運航を終了し、代替の船を探したが断念した。プログラムの核となっていた船内活動がなくなる一方、現地の滞在時間が延びる利点もある。40年以上続く恒例事業が転換期を迎えている。

 少年の船は、県などでつくる実行委員会が主催。公募や推薦で選ばれた県内の小中高校生がチャーター船に乗り、4泊5日の集団生活で社会性や生きる力を育む。1980年にスタートし、これまでに延べ約2万5千人が参加した。

 新型コロナウイルス禍で2020年から県内での陸上研修に切り替えた。船での再開を模索する中、利用してきた大型船「ぱしふぃっくびいなす」が経営環境の悪化で今年1月に客船事業をやめ、見通しが立たなくなった。

 県は昨年11月に連絡を受け、代替船の検討に着手。同船の運航費約5千万円と同程度の大型客船や定期船を探したが「日程の確保が難しかったり、費用が高額だったり、折り合いがつかなかった」(県私学振興・青少年課)という。

 実行委は「子どもたちのために事業を継続することが何よりも重要」と判断。協議の結果、空路での実施を決めた。名称も「県少年の翼」に改めた。参加人数は約250人で従来の半数程度となる。

 同行する運営委員を務める松本弘次さん(54)=別府市子ども会育成会連合会事務局長=は「外部と遮断された船内で子どもたちが絆を深めていくのが醍醐味(だいごみ)だった。少し残念だが、事業が継続されてほっとしている」と打ち明ける。

 小6の時に参加し、現在は運営委員の介護職員黒川弥綺(みき)さん(28)=宇佐市清水=は「貴重な体験をさせてもらっていたと改めて感じた。手段が変わっても子どもたちが成長できる旅になるように全力で支えたい」と語った。

 今回は福岡空港から沖縄を訪れる3泊4日の日程。船より1泊少なくなるものの、現地の滞在は1日多い2.5日間に延びる。沖縄本島の恩納(おんな)村にある宿泊研修施設を拠点に、文化見学やサンゴ礁の観察、地元の子どもたちとの交流などを盛り込む予定だ。

 同課は「移動時間が短縮できるメリットを生かして現地での活動を充実させたい。成果を踏まえて今後の在り方を検討する」と話している。

<メモ>

 県少年の船は国連が「国際児童年」(1979年)を採択したのを機に、県青少年団体連絡協議会などが翌年に開始。2011年から実行委員会主催となった。県によると、かつては全国各地の自治体が同様の事業を実施し、現在も続けているのはわずか。大分県の累計参加者数は最大規模とみられる。

■8月5日から3泊4日、「少年の翼」参加募る

 県などでつくる「大分県少年の船」実行委員会は、本年度の「県少年の翼」に参加する小学生を募集している。14日まで。

 県内在住の5、6年生が対象。8月5~8日の3泊4日で沖縄県を訪れる。

 募集は192人。参加費は4万円。保護者と共に7月22日と10月7日の事前・事後研修に出席する必要がある。応募多数の場合は抽選し、5月下旬にメールで通知する。

 申し込みは県のホームページから。問い合わせは事務局の県私学振興・青少年課(097.506.3087)。

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