宝塚歌劇 花組公演「二人だけの戦場」大阪で上演中 トップ柚香光、苦悩の青年士官を熱演

配属先の基地に向かうシンクレア(柚香光)=梅田芸術劇場メインホール

 宝塚歌劇花組公演「二人だけの戦場」が大阪市北区、梅田芸術劇場メインホールで上演中だ。内戦勃発の危機に面した架空の連邦国家を舞台に、紛争や民族問題に翻弄(ほんろう)される恋人を描く。理想を掲げ平和への道を模索する青年士官をトップ柚香光(ゆずか・れい)が熱演している。

 作・演出は正塚晴彦。1994年に雪組の一路真輝(いちろ・まき)と花總(はなふさ)まり主演で上演され、29年ぶりの再演。

 連邦軍のエリート士官シンクレア(柚香)は、同僚のクリフォード(永久輝=とわき=せあ)とともに、連邦からの独立の機運が高まるルコスタ自治州に配属される。いつ戦闘が始まってもおかしくない緊迫した情勢の中、シンクレアは同自治州の少数民族の少女ライラ(星風=ほしかぜ=まどか)と出会い、引かれ合う。

 無益な争いを避け、「違いを認め合いながら平和に暮らしていきたい」と願うシンクレアだが、流れは変えられない。眉間にしわを寄せ、憂いをたたえた表情の柚香。たっぷりと間をとり、時折舞台を包む沈黙が、その苦悩を代弁するかのようだ。

 張り詰めたシンクレアの表情が緩むのは、ライラと過ごすひととき。祭りに繰り出し、2人が笑顔で踊るシーンが悲劇へと向かう物語をつかの間、和ませる。

 終盤、シンクレアは上官を殺してしまい、その罪を問う裁判シーンが劇中、幾度も差し挟まれる。そのたびに情状弁護のため登場するクリフォードが親友、シンクレアの心情や状況を熱く代弁し、友情の深さを感じさせた。

 軍服姿の柚香のりりしさと、自由に生きる少数民族の誇りと愛を知った喜びを星風が体現し、2人の演技とたたずまいが見事にはまった舞台だった。

 6日まで。13~19日、東京建物Brillia HALLで上演。(小尾絵生)

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