なぜ開票率数%でも当確が出るの?逆になかなか当確が出ない場合ってどんなとき?

選挙の時期にテレビを眺めていると開票率が数%であるにも関わらず、「当選確実!」という文字が目に飛び込んで来ることがあります。

そうした中で、「なんでこんなに少ない開票数から結果が判るんだろう」と訝しんだことがある人は少なくないのではないでしょうか?

そこで今回は、選挙結果を早々に判断できる理由やその仕組み、逆に選挙結果をなかなか出せない場合はどんな場合なのか?をご紹介していきます。

開票数%なのに当選確実、その仕組みとは?お味噌汁の味見を例に

まだ数%に満たない開票数であるにも関わらず、高い確率で結果を予想できるのは統計を行っているからです

統計学を日常的に私たちが使っている、ということを示すためによく使われる例として「お味噌汁の味見」があります。

例えば、鍋いっぱいのお味噌汁を作った時、味噌や出汁の具合を調整するためにわざわざお椀を出して丸々一杯飲むでしょうか?たいていの場合はお玉に一掬い程度を味見をすればその後に何を足せば良いか、おおよその検討はつきますよね。

一掬いの味噌汁から鍋全体の味噌汁の味が予想できるように、無作為に取り出したデータがあれば、その数が全体の数%でも全体の動向をおおよそ予測することができるのです。

実際に数%から結果を予想できるの?Googleスプレットシートで数値実験をしてみた!

では実際に数%から全体の傾向が判るのか、Googleスプレットシートで数値実験をしてみました。

今回の条件は母集団を1000人としてそのうち70%の確率でA党に、それ以外の場合はB党に投票するようにRAND 関数を使い、乱数を発生させます。

=if(RAND()< 0.7, 1,0)

ここで重要になるのが信頼係数許容誤差です。

p=0.7

信頼係数

許容誤差

70%

75%

80%

85%

90%

95%

99%

1%

693.07

735.57

775.40

813.30

850.46

889.81

933.10

5%

82.84

100.13

121.34

148.39

185.33

244.15

358.11

10%

22.08

27.06

33.37

41.74

53.81

74.72

122.40

15%

9.94

12.21

15.11

18.99

24.65

34.65

58.37

N=1000

なお信頼係数と許容誤差ごとの人数はNORMINV関数を使い、スプレッドシート上で以下のように求めました。

=母集団の数(N)/((許容誤差/NORMINV((1-信頼係数)/2,平均,標準偏差))^2*((母集団の数(N)-1)/(確率(p)*(1-確率(p))))+1)

例えば、この条件で、信頼係数が95%で許容誤差が10%となるのはおおよそ75人。つまり無作為に75人(全体の7.5%)を選んだ場合、95%の確率で60〜80%の人がA党に投票していることになります。

数値実験を行った結果、母集団の得票数はA党とB党でそれぞれ以下のようになりました。

全体(N=1000)

A党

B党

得票数

706(70.6%)

294(29.4%)

さらにこの結果に対し、無作為なサンプリング抽出を3回行った結果それぞれ以下のようになりました。

標本1(N=75)

A党

B党

得票数

51(68.0%)

24(32.0%)

標本2(N=75)

A党

B党

得票数

53(70.7%)

22(29.3%)

標本3(N=75)

A党

B党

得票数

57(76%)

18(24%)

どの標本でもA党の得票数が高くなり、母集団と同じ結果となりました。

また、テレビなどで発表される当選確実は開票結果からの統計だけでなく、出口調査や事前の世論調査のデータを使い、複合的に判断することでより確度を高めていると考えられます。

選挙結果がなかなか見えないのはどんなとき?

一方で、選挙結果がなかなか見えない、という選挙も少なくありません。例えば、2020年11月に開票された「大阪都構想」の賛否を問う住民投票では、開票率73%になった22時時点でも賛成と反対、どちらが勝つか判断できない状況でした。

その理由としては結果が超僅差だった、ということが理由に挙げられます。

このとき、「反対」は69万2996票(50.6%)、「賛成」は67万5829票(49.4%)とその差はわずか1.2%の大接戦でした。

また同年に開催されたアメリカ大統領選挙では「選挙人」という制度があり、それによってなかなか得票状況が見えにくくなっています。

この制度は全米50州に連邦議会の上下両院議員と同数の選挙人が、首都ワシントンには特別区として3人の選挙人が割り振られており、その地域ごとの得票数に応じて、勝った候補がその州の選挙人を総取りします。(総取り制度ではない州も一部にあります。)そのため単純な得票数だけでなく、「どの州の得票数か」という点も変数として考慮しなくてはならないため、結果を予想することが難しくなるのです。

実際2016年の大統領選挙では、トランプ氏が得票数では下回ったものの、選挙人の多い州で競り勝ちました。

しかし、こうした現状に疑問を呈する声も少なくなく、一部の州では大統領選において、州内の集計結果にかかわらず、全米の得票総数トップの候補がその州に割り当てられた選挙人を獲得する、という「全国一般投票州際協定」への加入が表明されており、今後「選挙人」制度は実質廃止となっていくと予想されています。

おわりに

今回は選挙結果がすべての票を開票する前に判断できる理由とその仕組み、そして逆に選挙結果をなかなか出せない場合はどんな場合なのか、を調べました。

こうしたことを知っておくことで選挙の際、より納得感をもって開票速報などをみることができるのではないでしょうか?


【参考引用サイト】
・<a href="https://datacoach.me/knowledge/basic/samplesize-q/" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">アンケート調査は400人が妥当か? | DATA自由自在</a>
・<a href="https://support.google.com/docs/answer/3094022?hl=ja" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">NORMINV - ドキュメント エディタ ヘルプ - Google Support</a>
・<a href="https://www.yotsuyagakuin.com/b_geneki/toukeigaku-senkyo/" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">「開票5%で当確」の不思議。統計学ってどういう学問?</a>
・<a href="https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1212/18/news010.html" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">なぜ開票率1%で当確が出るのか?</a>
・<a href="https://support.microsoft.com/ja-jp/office/rand-%E9%96%A2%E6%95%B0-4cbfa695-8869-4788-8d90-021ea9f5be73" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">RAND 関数 - Office サポート - Microsoft Support</a>
・<a href="https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/47564.html" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">「大阪都構想」 民意は大阪市存続を求めた | 特集記事 | NHK</a>
・<a href="https://www.asahi.com/articles/ASNC143HDNC1PTIL008.html" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">大阪都構想 - 朝日新聞デジタル</a>
・<a href="https://www.tokyo-np.co.jp/article/65937" rel="noopener noreferrer" style="font-size: 0.75rem;" target="_blank">アメリカ大統領選のしくみ 州ごとの「選挙人」って?</a><span style="font-size: 0.75rem;"> </span>

(大藤ヨシヲ)

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