製造業で導入が進んでいるKPI(ロジック)ツリーとは?
製造業では、従来からQ(Quality:品質)、C(Cost:原価)、D(Delivery:納期)の向上が経営指標の達成に結びつくという考え方が広く認識されています。
しかしこのQCDは、ある要素の向上が別の要素の低下を招くなど、相反する関係にある課題・問題が多く、多くの製造業がQCD向上の難しさに直面しています。
それぞれの要素がお互いに干渉しあわない解決策や対策を実践する事でQCDは大きく向上させることができ、半ば諦め状態だった製造現場でもその要素は実はまだまだ潜在しています。
昨今では、「見える化」することで潜在する課題・問題、解決策・対策を明らかにしてくれるKPI(ロジック)ツリーとKPIマネジメントが既に限界に達したと思われがちな製造現場のQCDに変革をもたらしています。
製造業とは
製造業とは、”モノ”を作り、製品として販売したり、部品として供給したりして利益を得ている業界のことです。
製品として販売している製造業は、企画、開発、生産、流通、販売まで手がけているグローバル企業から、ネジ1本を自動車メーカーに納めている町工場まで、企業規模も製造品目は多岐にわたります。
日本経済は製造業に支えられ、そして「モノづくり大国」と言われるまで成長した日本の製造業の品質は世界トップクラスと言われています。
そんな製造業もかつては部品の加工、製品を組み立てるライン作業では、人の手に大きく依存していました。
近年では自動化が進み、さらにセンシング技術やIoT・ICT、AIといったデジタル技術の発達と導入により、様々な工程(製造、組立て、加工、仕上げ、点検、仕分け、梱包、生産管理)でデータが取得・蓄積できるようになりました。
最新のデジタル技術で取得したデータの活用、制御・管理の自動化によって実現するスマートファクリーにより、日本の製造業は新たな変革の時代に突入し始めています。
KPI(ロジック)ツリーとは
ロジックツリーとは、問題をツリー状に分解し、その原因や解決策を論理的に探すためのフレームワークのことです。
問題を頂点とし、原因や解決策で分解し、それらを線で結んだ図が“木”に見えるため、”論理の木“とも呼ばれています。
KPIツリーは、もともと問題解決プロセスであるロジックツリーから派生したものです。
問題をKGI(Key Goal Indicator/経営目標達成指標)に、原因や解決策をKPI(Key Performance Indicat/重要業績評価指標)やそのKPIを達成するためのより細かいKPIに置き換えます。
KPIはKGIの中間目標に位置付けられ、それに紐づいた日々のアクションの実践の進捗を示します。
そのため、KPIツリーでは、他のロジックツリーと異なり、各要素の数値化を前提としています。
この各KPIの数値を進捗として、タイムリーに確認することで、KGIの達成に向けた企業の動きが管理しやすくなります。
製造業でKPI(ロジック)ツリーが注目されている理由
製造業では、利益、生産効率向上の基本をQCDとしています。
QCDとは、Q(Quality:品質)、C(Cost:原価)、D(Delivery:納期)の頭文字で作られた言葉ですが、
- ●品質を向上させると原価が高くなる
- ●原価を下げると品質も下がる
- ●納期を短くすると品質が下がる
など、向上には相反する問題が伴うため、ある程度、最適化された昨今の製造業では、これらを並行に向上させる施策が探し出せない状況に陥っています。
これ以上、継続的にQCDを向上し続けるには、より深く、高い精度で問題・課題を抽出する必要があり、人の視覚や想像では捉えきれなくなりはじめています。
そこで製造業で昨今注目されているのが、KPIツリーによるQCD要素の探索とKPIマネジメントによるQCDの向上プロセスです。
昨今では、センシング技術、IoT、AI、そしてこれらを連携するシステムにより、様々な工程でデータの収集を実現します。
最先端の製造業の現場では、収集したデータを適切に分析し、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールで「見える化」することで、より深部に潜伏する問題・課題を捉えてくれます。[blogcard url=”https://data.wingarc.com/kpitreeofmanufacturing_template-32123″]
製造業で活用されている主なKPI
製造業では国際基準で定義されたものから、自社の風土・文化に合わせて独自に設定したものまで、様々なKPIが活用されています。
国際基準としては、MES(製造実行システム)領域のKPI(重要業績評価指標)とそのデータがISO22400で定義されています。
分類ISO22400で定義している
MES(製造実行システム)領域のKPI効率性労働生産性、負荷度、生産量、負荷効率、利用効率、設備総合効率、正味設備効率、設備有効性、工程効率品質品質率、段取率、設備保全利用率、直行率、廃棄度合、廃棄率、工程利用率、手直率、減衰率能力機械能力指数、クリティカル機械能力指数、工程能力指数、クリティカル工程能力指数環境材料使用率、有害物質、危険物質廃棄率、総合エネルギー消費量在庫管理在庫回転率、良品率、総合良品率、製品廃棄率、在庫輸送廃棄率、その他廃棄率保全設備負荷率、平均故障間隔、改良保全率
ISO22400ではIoTで取得したデータでKPIを算出することを前提としており、製造業のKPIの構造や理論も体系化しています。
そのため、ISO22400の取得を目指さずとも、KPIに取り組もうとする多くの企業では、ISO22400を参考に自社にマッチしたKPIを設定しています。
なお製造業では、生産だけでなく、開発部門と一体で経営している企業も多く、そのような現場では、開発数(製品数)、開発期間、提案率などのKPIで開発力の増強を定量的に計っています。
製造業では、品質向上を最優先としており、ISO22400に準拠しない独自のKPIを設定することで、ナレッジ化やノウハウなどで競合他社との差別化にもつなげています。
また、製造業の中では、QCD以外に従業員の安全、働きやすさの向上を目指している企業も多く、そのような企業では、事故発生件数や健康経営の指標などもKPIに設定しています。[blogcard url=”https://data.wingarc.com/kpitreeofmanufacturing_template-32123″]
製造業のKPI(ロジック)ツリーの作り方
製造業のKPIはKGIにつながる要素においては、QCDのプロセスで培った指標を用いることになります。
ただそれだけでは、製造現場の問題・課題は表面からしか探すことができません。
さらに深部に潜んでいるQCD向上の要素を探しだすには、デジタル技術によって蓄積したデータ活用が必要不可欠です。
昨今の製造機器は自動で加工、組み立てを実施するのと同時にデータを取得する機能も備えています。
取得したデータは、データベースエンジンとBIツールを活用することで、KPIロジックツリーの作成のみならず、KPIマネジメントにも活用することができます。
データを分析する
昨今の製造業では、入荷からに出荷に至るまでの作業を自動に行うのと同時に、様々なデータも収集できます。
製造リードタイム、生産量、時間稼働率、不良率、原価率といった製造業の指標をより細分化する事で今まで気が付かなった振る舞いや傾向が「見える」ようになります。
ただ無駄を減らし、効率をあげるだけでは、QCDのC(Cost:原価)、D(Delivery:納期)の向上は期待出来ますが、Q(Quality:品質)の向上には繋がりません。
そこで昨今注目されているのが画像データとAIによる分析です。
特にユーザーに安心と安全を担保する検査の工程のデータは、製造の現場はもちろん、企画、開発、カスタマーサポートのQCDの向上にも活用することができます。
セグメントを分解する
セグメントとは、KGI、KPIがそれより下位のKPIの足し算で成立する場合の項を指します。
例えば、製造コストの場合、材料費、設備費、労務費、外注費などの和がKPIとして求められます。
セグメント分解では、品質、コスト、納期の指標をまずは足し算で分解することからはじめます。
行動を分解する
セグメントに分解したKPIをさらに分解すると、足し算ではなく、掛け算で算出されるKPIで構成されていることがわかります。
製造業のKPIとして良く活用されている“設備総合効率”では、時間に対する“ロス”を“行動”に分解してKPIの要素を抽出します。
数式でアプローチする
製造業の生産能力を総合的な観点で算出した“設備総合効率”では、“行動”の要素である“時間稼働率”、“性能稼働率”、“良品率”の内訳が重要になります。
例えば、時間稼働率=80%、性能稼働率=50%、良品率=90%の場合、設備総合効率は、36%になります。
この場合、時間稼働率、良品率は既に高水準なので向上の難易度は高いと判断するのが妥当です。
もっとも改善の余地のある“性能稼働率”に着目し、60%達成を目標とした場合、“設備総合効率”は43%(+7%)まで向上見込めます。
製造業では従来のQCDのプロセスより、数式で指標を算出することで、定量的なアプローチが試みられています。
これらの多くは、KPIにも適用が可能ですが、これまでは
- ●粗い(精度が低い)データしか取れない
- ●データの取得手段が無い
- ●システムへのデータ入力の負担が大きい
といった問題でKPIを活用することができませんでした。
昨今ではデータベースエンジン、BIツールの登場によりこのような問題は解決されつつあります。
仮説を立てる
データでは、QCD向上の余地を示しているものの、KPIの要素の正体が不明確なケースは実は少なくありません。
データ化が可能なものは、新たに分析する事で追従できますが、そうでないものに関しては、仮説を立てて、検証する必要があります。
仮説を明らかにするための施策は、PDCAで実践する事でより高い確度で進められます。
仮説が立証されたKPIは、上位のKPIに繋げることでQCDの向上具合が計れるになります。
仮説の構造を明らかにする
先程紹介した仮説で更なるデータの分析でも行動に至る要素が分析できない場合、カットアンドトライ、消去法といった施策でその構造を明らかにしていきます。
これらの多くは、人手を必要とする工程に潜伏しているケースが多く、例えば、
- ●技術者のスキル向上
- ●適切な人員配置
- ●従業員のモチベーション
などを要素としている可能性があります。
日本の製造業は、特殊な技術で成り立っている場合があり、自動化されていない工程も実は多く、このような領域をフォーカスすることで高い効果が得ることが期待できます。
構造の実証には比較的時間を要し、また上位のKPIに繋がらない可能性もあるため、製造現場全体のKPIから切り離した方が実証はスムーズに進みます。
KPI(ロジック)ツリーで可視化する
セグメント、行動で分解したKPIを抽象度の高い要素を頂点に置き、それの要素になるKPIを線(枝)で結びます。
これをツリーの末端の末端となる要素(葉)まで繰り返すことでKPIツリーが完成します。
KPIツリーを作成する事で、具体的な施策に至るまでのプロセスが網羅できるようになります。
また、いざ実践をするにあたって、注入すべきマンパワーや投資なども「見える化」されるので、経営面のリスクの回避にも繋がります。
製造業のKPI向上は、設備投資で対処できるものは、即座に対応し、そうでないものは、ナレッジ化といった観点で取り組むことで着実な向上が期待できます。
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製造業のKPI(ロジック)ツリーの導入事例
製造業のQCD向上にはKPIの「見える化」が必要不可欠です。
データを集約・可視化するウイングアーク1st社の「MotionBoard」を採用することでKPIツリー、KPIマネジメントに成功している製造業の導入事例をご紹介します。
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株式会社デンソー
世界的な自動車部品のサプライヤーである株式会社デンソー。
制御系組込ソフトウェア開発を担当している電子機器事業グループの設計現場のMotionBoardの活用で「見える化」したKPIの成功事例について紹介します。
Company Profile
企業名株式会社デンソー設立1949年本社愛知県刈谷市事業内容自動車部品やシステムの開発・製造で知られる世界トップレベルのパーツ・サプライ ヤー企業。世界の主要な自動車メーカーに 部品を供給し、世界30ヶ国、13万人が従事している。URLDENSO – 株式会社デンソー / Crafting the Core /#### 採用の背景
- ●制御プログラムの開発規模が膨大化し、開発工数管理を強化したかった
- ●工数計測の入力ツールの利用が定着せず、実態が見えなかった
- ●管理レポートの集計作業に2ヶ月かかり、タイムリーな反映ができなかった
導入のポイント
- ●現場主導で小規模にスタートし、徐々に部門展開できる拡張性
- ●“ものづくり”に長けた国産製品であることの安心感
導入効果
- ●現場の“カイゼン”活動に合わせてKPIを柔軟に修正できるようになった
- ●施策の良否判断が容易になり、「効果」の見える化ができた
- ●プロトタイプ開発により短期導入を実現。改善も最短2時間でリリース
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まとめ
今回は、「製造業」のQCDを向上するためのKPI(ロジック)ツリーについて紹介させて頂きましたが、データ活用とBIツールが重要な役割を担うことをご理解頂けたでしょうか?
最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。
- 製造業では従来のQCDの向上に限界を見え始めており、データ活用とBIツールを活用したKPIツリーを導入することで深部に潜在する要素を抽出する方法に注目が高まっている。
- 製造業でKPIツリーとKPIマネジメントを導入するには、データ収集に対応した設備、IoT、人での負担を減らすツール、システム、そして「見える化」を実現するBIツールの導入が必要不可欠
- 製造業の「見える化」とKPIツリーには、データのじかんを運営するウイングアーク1st社の「MotionBoard」を多くの企業が採用
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