地域活性化の一方で200億円超の“税金流出”も…「ふるさと納税」の光と影

応援したい自治体に寄付をすると、所得税や住民税が一定額控除される上、地域の特産品など「返礼品」がもらえる「ふるさと納税」。

ファンの多い自治体は全国からの寄付で財政が潤う一方、大都市では多額の税金が他の自治体に“流出”してしまうケースもあるそう。

そんなふるさと納税の「光」と「影」に迫ります。

■5年連続トップを独走!“八幡浜ブランド”の魅力とは?

昨年度の愛媛県内の「ふるさと納税」寄付額のランキングがこちら!

3位・愛南町の約9億9000万円、2位・今治市の約11億6000万円を抑え、1位は八幡浜市約19億6000万円

県西部に位置する八幡浜市。実は5年連続でトップを独走しているんです。
この人気の理由を探るべく訪ねたのは八幡浜市役所。

市では2022年4月から「ふるさと納税」専門の部署を新たに設置するなど力を入れてきました。
出迎えてくれた八幡浜市のPRキャラクター「はまぽん」に人気の理由を聞いてみました!

<はまぽん>
「八幡浜産かんきつのブランドイメージが、全国にどんどん浸透してきている結果だと思います!」

八幡浜市の返礼品は3つの仲介サイトに約70の事業所が商品を登録しています。

中でも圧倒的な人気を誇っているのが「紅まどんな」や「せとか」といった愛媛の“ブランドかんきつ”。約9割の方がチョイスするそうです。

<八幡浜市ふるさと納税推進室・成田貴史 室長>
「50%強が首都圏からの注文です。リピーターも多く毎年頼む人もいます」

ふるさと納税の件数が増えることで、返礼品を提供する業者の注文件数も増加しています。市内でかんきつの生産や販売を手掛ける「かじ坊」で聞きました。

<かじ坊・梶谷高男 代表取締役>
「注文数は右肩上がりに伸びていて、売り上げの2~3割が返礼品を占めています。やっぱり、八幡浜市の名前が全国に知れ渡ってきたのもあるし、美味しいものが揃っているのが寄付額1位の要因だと思います」

さらに、返礼品をきっかけにリピートが舞い込む相乗効果もあると言います。

<かじ坊・梶谷高男 代表取締役>
「ふるさと納税の返礼品をきっかけに八幡浜のかんきつを知ってもらう流れもあるので、いろいろな方に返礼品という形で美味しいものを届けられるのは、ありがたいチャンスだと思います」

■次の目標は20億円! 返礼品には“ソウルフード”も

また、返礼品には八幡浜のソウルフード「八幡浜ちゃんぽん」も!
こちらの商品は、冷凍の麺と具材、スープがセットになっていて、そのまま鍋で加熱すれば手軽に地元の味が楽しめるようになっています。

<フジ観光・梅林幸弘 社長>
「もともと八幡浜ちゃんぽんを全国に広めようと冷凍品を開発しました。そこにコロナ禍があって『おうちでごはん』という風潮になり、少しずつ注文が伸びてきています」

こうした返礼品の人気も後押しして、八幡浜のふるさと納税はまさに“うなぎのぼり”。昨年度は約19億6000万円の寄付が集まり、5年連続で過去最高を更新しています。

八幡浜市は寄付した人の希望も踏まえながら医療や福祉・地域振興などにふるさと納税を活用する予定で、今年度は20億円を目標にさらなる魅力発信に力を尽くしたいとしています。

■ふるさと納税全国1位は…食べ物がおいしい“あの市”でした

ふるさと納税を行っている人は、全国的にも年々増えています。総務省によると、2021年度の寄付額の推計は全国で合わせて約8300億円と右肩上がりなんです。

ところで、全国で一番「ふるさと納税」を集めている自治体はどこだと思いますか?

正解は…北海道の紋別市で約153億円!※2021年度実績

この年も愛媛県内トップだった八幡浜市の10倍以上です。返礼品としては、「ホタテ」や「カニ」などの海産物が人気だそうですよ。また珍しいものでは、オホーツク海などに流れ着いた「流氷」も返礼品に選ばれています。

そして、第2位は宮崎の都城市(みやこのじょうし)。3位・4位も北海道の自治体が続きます。

■230億円が“流出” 大都市ではふるさと納税の「影」も!?

寄付がたくさん集まる自治体の財政は潤う一方で、大きな都市の場合、それだけ多くの人がふるさと納税をすることにもなります。それにより、多額の税金が他の自治体に“流出”しているケースもあります。

2021年度のデータを見ると、▼大阪市・約124億円▼名古屋市・約143億円▼横浜市・約230億円がふるさと納税により他の自治体に流れ出ている現状があります。

ただ、ふるさと納税に伴う減収分(=市民による納税額)の約75%は国からの交付税で補われます。そのため横浜市の場合、実際の損失は230億円の25%=約60億円だったそうです。

一方、横浜市に集まったふるさと納税は約3億3000万円でした。市は寄付の増額を図ろうと、今年度は返礼品として「ホテルの宿泊券」や「横浜中華街の食事券」といった観光分野に力を入れていくそうです。

■ユニークな返礼品も! 松山市の場合は?

では、また、愛媛県内で人口が最も多い松山市の場合を見ていきましょう。

2021年度に集まったふるさと納税が約6億6000万円。逆に減収分(=市民による他自治体への寄付額)は約9億5000万円だったということですが、こちらも横浜同様減収分の補てんがあります。

ちなみに松山市では、今年度から返礼品として市内の工場のみで製造しているスナック菓子「カール」の「うすあじ」と「チーズあじ」が返礼品として登場します!

東日本では現在、販売終了となっているので意外と貴重な存在です。懐かしいあの味を楽しみたいという方は、ぜひ寄付を検討してみてはいかがでしょう。

ふるさと納税のこの制度が続く以上、返礼品による税金争奪戦が繰り広げられそうです。特産品を通じた地域のPRはもちろん、制度本来の趣旨に立ち戻って「応援したくなる」「行きたくなる」「住みたくなる」町づくりも、さらに重要なりそうです。

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