ウクライナ兵、精子保存し前線へ 人口減懸念、無料のクリニックも

キーウの不妊治療クリニック「IVMED」で冷凍保存されている精子などを保管する容器=4月(共同)

 ウクライナで、戦地に赴く前に自身の精子を冷凍保存しておく兵士たちがいる。死と隣り合わせの前線で戦うための「準備」という。ロシアの侵攻で人口減が懸念される中、無料で保存を行うキーウの不妊治療クリニックの主任医師は「出産を望む女性や子孫を残したい男性に安心感を与える『保険』のような意味がある」と強調した。

 「母親になるチャンスをもらった」。女性地質学者のイリーナ・トカチュクさん(29)が言う。夫オレスさん(29)は侵攻直後の22年3月に国家親衛隊に入隊。12月、激戦地の東部ドネツク州に派遣される前に「遠い所にいても、使えるように」とクリニックで精子を冷凍保存した。

 18年に結婚。子どもはまだいないが、2人欲しいと願ってきた。親戚に双子が多く「もしかすると私たちも」と笑い合った。猫と暮らすアパートで「戦争が終わるまで、夫は戻れないと分かっている」と話した。

 キーウの不妊治療クリニック「IVMED」では侵攻後、軍などに参加する人を対象に、精子凍結と1年間の保存費用約1万3千円相当を無料にした。

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