イバラキング高級品化 茨城県、外観向上へ実験

イバラキングの実証実験で温風のトンネルを前に話す生産者ら=鉾田市安房

メロンの県オリジナル品種「イバラキング」の高級品化に向けた茨城県の実証実験が鉾田市で始まった。県産メロンは食味が良く、生産量日本一ながら、静岡県産や北海道産に比べると、高級品市場での認知度はまだ途上。そのため、美しい網目や、アンテナと呼ばれるT字型のツルをつくるなど外観を向上させ、贈答用に適したブランド化を目指す。

メロンの一大産地、鉾田市安房。栽培歴約20年の方波見嘉弘さん(44)が話す。「網目をきれいに出すのは難しいが、どうにか品質を高めたい」

ビニールハウス内では、小型の熱風式ヒーターが稼働。地面にはビニールのトンネルが延び、その中を温風が通る。約1メートル間隔で開けられた穴から暖かな空気が出て、周囲の乾燥につながる。

春先に出荷されるイバラキングにとって、生育時は気温や地温が低い。指導に当たる鉾田地域農業改良普及センターの担当者は「曇天だと、果実周辺の湿度が下がらず、表面が乾燥しにくい。その結果、大きなひびが入ってしまうことがある」と話し、きれいな網目を出すため乾燥の必要性を示す。

茨城県はメロンの生産量日本一を誇る。一方で贈答用としては存在感を十分に示せていない。こうした状況を打破しようと、県が高級品化を目指して本年度始めたのが「いばらき高品質メロン創出事業」だ。

実証実験には、栽培方法などを研究するJAほこたメロン部会メロン研究部の部員3人が挑む。そのうちの一人、方波見さんは3月から複数のハウスで、昼や夜などさまざまな時間帯の実験により、温風で網目がきれいに出ることを確認した。

JAほこたは、実証実験で得た適温や湿度のデータを広く生産者に普及していく考えだ。方波見さんは効果とともに「(熱風式ヒーターの)ほ場での電源の確保が必要で、燃料代がかかる」と課題も示す。

実証実験では、網目だけでなく、アンテナと呼ばれるT字のツルをつける技術も探っていく。高級メロンの証しとされ、フックと糸で果実をつり上げ、ツルを地面と平行にして育てるという。

県は同創出事業の一環として、初めてイバラキングの品評会を今月開く。

県産地振興課は「流通関係者からも、イバラキングに対する評価は高い。より高い単価で販売できるよう、高級感を打ち出したい」としている。

出荷間際のイバラキング

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