津波…“土産買って食事した所”へ逃げろ! 海水浴場に「観光×避難」施設【わたしの防災】

津波に備えて静岡県内の沿岸部にはたくさんの避難施設ができましたが、単なるタワーでは雨、風がしのげず、普段は使えないという問題があります。伊豆市では、平時に“観光施設”として機能する新たな津波避難施設の建設が進められています。

最大9連休のゴールデン・ウィーク初日の4月29日、土肥海水浴場(伊豆市)にはまだ冷たさの残る海で遊ぶ観光客の姿がありました。

<中西結香記者>

「観光客が訪れる土肥海水浴場の目の前。今まさに、津波避難タワーの建設が進められています」

2023年12月に完成予定の津波避難施設。しかし、ただ避難するだけの建物ではありません。

<伊豆市危機管理課 木口隆志主査>

「あちらが今、整備を進めている津波避難複合施設になります。土肥の地域が主要な産業が観光業ということで、有事の際は津波の避難の施設、平常時は観光に資するような機能を併せ持った複合施設」

施設は、鉄骨4階建て。1階は土産物などの販売スペース、2階はフリースペース、3階はレストラン、4階はフリースペースと展望台になる予定で、きれいな夕陽も見ることができます。

伊豆市によりますと、観光と防災を併せ持った津波避難複合施設は全国初といいます。しかし、なぜ海水浴場の目の前に作るのでしょうか。

<伊豆市危機管理課 木口隆志主査>

「(土肥海水浴場周辺が)避難の困難な人が出る想定がありまして、だいたいそれが1200人くらい。そうすると、この辺の地域に避難施設が必要ではないかと」

伊豆市土肥地区は、南海トラフ巨大地震で最大10mの津波が最速6分で到達すると想定されています。現在、土肥地区には津波避難タワーやビルが15か所あります。しかし、海水浴場周辺には避難場所が少なく、3000人の海水浴客が訪れた場合、約1200人分足りないことが判明。新たな津波避難複合施設では、3、4階に1230人が避難可能で足りなかった分を確保できることになります。

海水浴場の目の前で民宿を営む鈴木務さんも期待を寄せています。

<民宿美浜 鈴木務さん>

「(宿泊者には)紙か何か部屋に貼って、避難経路と商業施設もありますので、ぜひ一度見に行ってくださいと告知する。集客の面でも有事の際の避難場所としても、ダブルでとんでもなく期待している」

海を訪れた観光客も。

<函南町から来た観光客>

「(海水浴場の)すぐ近くに建ってあると、子どももいるのですぐに逃げられるのはいい」

<群馬から来た観光客>

「津波が来たらどうするんだろと話していた。安心してまた来られます」

土肥地区は2018年に全国で唯一、津波災害特別警戒地域「オレンジゾーン」の指定を受けました。病院や福祉施設、学校といった施設を海沿いにつくる際には高さ制限などが伴います。その上で地域の主要産業である「観光」と「防災」が両立したまちづくりを市民と市が協力して進めてきました。

<土肥温泉旅館協同組合 野毛貴登理事長>

「観光と防災は常に相反するもの。常に対極にいて、話を進めていってもこっちを立てればこっちが立たずとジレンマがあったが、今回まさにそれが融合してここに来れば観光も防災も一挙に解決する。観光事業者は期待している」

お土産を買って食事をした施設に逃げる。観光と防災を併せ持つ施設は、いざという時にわたしたちを安全な場所へ導いてくれそうです。

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