【寄稿】納得感がほしい(WEB版)/大﨑一万発

満を持してのデビューを飾った『L北斗の拳』が、予想以上の支持率でホールを席巻しています。ビッグデータが示す導入1週間の稼働数値はいずれも「逸材」ぶりを遺憾なく発揮しており(設定配分も破格ですネ)、今回ばかりは逆張りがお好きな業界人のネガキャンも鳴りを潜めている模様。さらにはこの後も、ハーデス、SAO、にゃんこ、ゴブスレ……、スペックと話題性が噛み合った大物タイトルが続々導入予定につき、パチスロ市場の高値トレンドは当面続きそうな予感です。

間違いなくパチスロのお客さん、それも若いプレイヤーが増えている。ですが、この先も定着してくれるのか、新規ユーザーは反応するか、そしてメインターゲット(であるはずの)スリープユーザーや年配層に届くのか……。それはホール様の「頑張り次第」と下駄を預けますが(責任転嫁ごめんなさい)、広告宣伝規制の緩和が全国的に進みつつある状況も心強く、撃ち合い大歓迎でガンガン盛り上げていただきたいと思います。

と、活況著しいパチスロ市場に対し、パチンコには今ひとつ元気が感じられません。一旦は盛り上がったミドル市場も、結局はパチスロからのスライド客が主だったに過ぎず、あっという間に北斗やカバネリに戻ってしまった。一撃性や出玉スピード、もちろん演出面の工夫も含めパチスロを上回る機種が揃っているはずなのに、一体これはどうしたことなんでしょう。

あくまで僕の感覚でしかありませんけど、特に若年層におけるパチとスロの支持率を分けるのは「やった感」の差。レバーを叩くごとに変化していく状況に応じて設定や内部モードを推測し、周囲の出方を観察ながらホールの仕掛けを看破する……。プレイヤー自らが押し引きの主導権を握りつつ、1G毎に正しく遊んでいると感じられるのがパチスロというゲームです。仮に負けたとしても、パチンコのように理不尽なやらずぶったくり感はなく、ごく常識的なリテラシーを持ち合わせていれば多少なりとも許せる(そして次につながる)総括ができることも大きなガス抜きになります。

それだけではなく、各種数値や演出を調べたり技術を磨くといった趣味として当たり前の追求が収支に直結します。ネットを通じて再現性のある攻略術の入手も容易です。やれそうに思えるゲーム性と環境が整っている……、もちろん勝つのは簡単でないと誰だって理解してはいますが、だからこそ、使ったお金と時間に釣り合う納得感を求めてパチスロを選ぶわけです。

対してパチンコは……、いちいち比べたら暗澹たる気分になりそうなので割愛しますが、一言で言うなら「時代に合わない」と身も蓋もないことになってしまいます。僕のような古いタイプのパチンコ打ちが魅入られたアナログな不確定性を、ロマンではなく不安と受け取るのが今の世相。つまるところハンドル握って待つだけの単純なゲーム性を、楽ではなく退屈と感じるのが若い世代。パチスロが受けている理由、例えば自力感であったり段階を踏んで上位役を目指すゲーム進行を取り入れる工夫も試みられていますが、いやそれを求める人は最初からパチスロ打つよねって話で、価値観の逆転に伴って、何を訴求するかの原点を作り変えなきゃ根本的解決には至らないのではないかとも思ってしまうのです。

じゃあどうすればいい? って、価値観がズレてしまった僕にアイデアなど出せるわけもないのですが、ひとつだけ言わせてもらうなら、勝とう頑張ろうと願う当たり前のユーザーメンタルを受け止めてくれるゲーム性を提供してくれということ。技術介入=やっちゃいけない悪って、理不尽パチンコの象徴じゃないでしょうか。だってパチスロでは軍団で荒らさない限りは全部オッケーなんですから。経験を積んで勉強すればゲームに介入できる、勝ちも近づく。それでこそのやった感であるし、納得感の提供です。技を競えるゲームだから時代にフィットしたパチスロ、封じて萎むパチンコ……。「挑戦者求ム!」なんて煽りまくる、尖った台を打てる日は訪れるのでしょうか。

■プロフィール
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。

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