ヴェルカ「最短でのB1」へ大詰め B2プレーオフ5日開幕 準々決勝はホームで熊本戦

得点、スチールでリーグ2冠に輝いたボンズ=長崎市、県立総合体育館

 バスケットボールのBリーグ2部(B2)プレーオフ(PO)は5日、東、西地区の計8チームが出場して開幕する。2枠のB1昇格切符と年間王座を懸け、長崎ヴェルカはレギュラーシーズン(RS)43勝17敗の西地区2位で出場。ホーム開催の準々決勝で熊本と対戦し、勝てば、A千葉-青森の勝者との準決勝(B1昇格決定戦)に進む。昨年10月~今年4月のRS60試合の成績は加味されない、2戦先勝方式のトーナメント。クラブ創設時から掲げてきた「最短でのB1昇格」への挑戦は大詰めを迎える。

  危機を好機に

 長崎県初のプロバスケットボールクラブのヴェルカはBリーグ参入1年目の2021~22年シーズン、B3で圧倒的な強さを見せて史上最高勝率で優勝。だが、今季参戦したB2は簡単にはいかなかった。想定外だったのは故障者の続出。前田健滋朗監督の「決して満足はしていないけれど、何とか踏ん張って最悪のケースは免れた」という言葉に実感がこもる。
 そんな思い通りに進まなかったシーズンだったが、この苦境は逆にチーム力を底上げした。佐賀に西地区1位こそ譲ったものの、主将の髙比良寛治は「一人一人が責任感を持って自分の仕事をするという意味ではいい方向にいった。ステップアップができた」。ピンチをチャンスと捉え、出場機会を得た選手たちが成長。大きな収穫だった。
 その総合力の高さは終盤戦で表れた。第29節はそれまで4戦全敗だった佐賀に連勝。続く第30節の福岡との2戦目はエースのマット・ボンズが初めてベンチ外となった中、42歳のジェフ・ギブスを軸に延長戦を制した。ホーム過去最多3616人が来場した愛媛との最終戦は、今季2番目に少ない52失点で大勝。前田監督は「今シーズンベストのゲーム」と振り返った。

  得点力トップ

 東地区を含めて勝率は4位だったが、1試合の平均得点はトップの89.7点。個人でもボンズが2位に4点以上の差をつける平均22.5点で得点王に輝き、Bリーグオールスターに出場した狩俣昌也は3点シュートの成功率で唯一40%台をマークした。
 その狩俣をはじめ、3点シュートはチームの武器の一つ。1試合平均試投数は2位福島の26.7本を大きく上回る32.3本。ゴール下でも活躍する身長204センチのパブロ・アギラールが、ジョーダン・ヘディング、狩俣に次ぐチーム3番目の4.1本を記録するなど、誰もが積極的に狙っていた。POでも、いかにいい形で外角シュートに持ち込めるかはカギになってきそうだ。
 土台となっているのは従来のポジションに縛られず、全員が外から仕掛けることができる「ファイブアウト」の戦略。チームの礎を築いた前監督の伊藤拓摩社長兼ゼネラルマネジャーは、その攻撃を「PO向き」と評した上で「シーズン通して、この守り方にはこう攻めるというのをたくさんためておいて、POになったらほぼすべての守り方を見てきたよねというのが理想」と語る。

  総力戦で勝つ

 この思い切りのいい攻撃を可能にしているのが、ヴェルカの代名詞となっている堅く粘り強いディフェンスだ。松本健児リオン、髙比良、榎田拓真、2月に加入した小針幸也らを中心に“攻める”ようなプレーで常に重圧をかけ続ける。チーム全体のスチール数はトップの1試合平均9.1を記録。持ち味の堅守速攻で流れをつかんできた。
 攻守両面でテンポが速く、走り続けるという運動量が不可欠なスタイル。だからこそ、声出し応援が解禁されたRS終盤は、会場の雰囲気が選手たちを後押しするシーンが何度もあった。POはこれまで以上の熱気でチームを勢いづけたい。
 「わっと盛り上がってくれると、僕らも“もう一回、もう一回”と頑張れる」。髙比良はチームの思いを代弁した上で、こう闘志を燃やす。「本当に総力戦。内容がどうであれ、ただ勝つしかない。全員がハードにアグレッシブにプレーして、お客さんにもハードに応援していただいて、興奮した状態で帰ってもらえるようにやる。勝つことが一番の恩返しになる」

B2トップの3点シュート成功率を記録した狩俣=長崎市、県立総合体育館
B2プレーオフトーナメント

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