キレそうなら6秒間大谷翔平のことを考えて!更年期イライラとの付き合い方3

まずは6秒間やり過ごそう(写真:PIXTA)

「なぜ、あんなひどい怒り方をしてしまったんだろう」

そうした後悔は、誰でも経験があるだろう。カッとなって瞬間的にとった言動が、相手を傷つけてしまう。相手の反応を見てハッとしても、時すでに遅し……。

「後悔しないように怒りと上手に付き合いたい。そのための心理トレーニングが『アンガーマネジメント』です」

そう話すのは日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実さん。

「冒頭のようにひどい怒り方をしたときは“後悔先に立たず”です。また、更年期だとなおさら感情コントロールが難しくなるでしょう。それでも、怒る必要がないことには怒らないで済むようになるのがいちばん。そのためには、以下の3つのポイントがあります」

【1】6秒ルール

イライラや怒りを感じた瞬間、暴言を吐いたり物に八つ当たりしたりするのを避けるため、6秒間だけ意識をよそに向けよう。

「イラッとしたら、とにかく6秒間やり過ごしましょう。たとえば大好きな大谷翔平選手の笑顔を思い浮かべたり、お孫さんやペットでもOK。6秒間、怒りとは別のものを思い浮かべるのです」

携帯の待ち受けを、大谷選手のホームランシーンなど大好きな画像に設定。イラッとしたら待ち受けを見る習慣をつけると、6秒間をやり過ごしやすくなる。

「怒りを数値化する方法もあります。怒りに、ちょっとむかつく程度の1から、全身が震える怒り心頭の10まであるとしたら『今はどれくらい?』と考えてみるのです」

どんな方法でも怒りの瞬間から6秒間やり過ごせば、理性が働き始め冷静に対応できる。怒りに任せていきなりキレるような言動は慎むことができるのだ。

【2】怒りの原因を分析し、相手が理解できるように伝える

「怒りは、自分の譲れない価値観である“べき”が破られ、思いどおりにならないときに生じます」

たとえば、気が利かない夫にイライラするとき、本当はどうする“べき”だと思っているかと考えると、「もっと家事を手伝うべき」などと自分の本心が見えてくる。

「ただ自分の期待と相手の認識は必ずしも一致しません。正確に伝えるためには具体性が必要です」

「家事」など漠然とした言葉ではなく、「食事のあとの洗い物」など具体的にするとよいそう。

さらに自分の気持ちを深掘りすると、「私がお願いしたらやる」ではなく「私が言わなくても、いつも手伝ってほしい」という期待も現れてくる。

「怒りの原因が分析できたら、次は伝え方です。『なんで手伝ってくれないのよ!』では相手は何をすればいいのかわかりません。『手伝ってほしければ、そう言えよ』なんて言い返されたら、さらにイライラするだけです。怒りは、具体的にリクエストとして伝えましょう。『食器洗いを手伝って。毎日、私が言う前に』。こう言えば相手に伝わります」

【3】自分をいたわる

とはいえ、更年期はわけもなくイライラすることも多い。

「自分をゴキゲンにしてくれるメニューをあらかじめリストアップしておきましょう」

前もってリスト化しておくことが重要だという。イライラしているときには思いつかないからだ。

「ゴキゲンメニューは3分でできるものから、10分、30分、1時間など時間ごとにそろえておくといいでしょう」

たとえば3分メニューなら、好きなアロマの香りをかぐ、紅茶やコーヒーなど好きな飲み物を飲んでひと息つく。10分ならストレッチやヨガをしてもいいし、30分あれば大谷選手の活躍シーンをYouTubeなどで見ることもできる。好きな音楽を聴くのもいいだろう。1時間あれば、散歩に出かけたり、マッサージをしてもらったり、お気に入りの入浴剤を入れてゆっくりお風呂に入るのもおすすめだ。

「自分の好きなことなら何でもOK。そのときの気分はさまざまですから、ゴキゲンメニューはたくさん持っておくのが◎です」

これら3つのポイントはどれも、「知っているからできる」ものではないという。

「特に6秒ルールはトレーニングが必要です。最初はできなくて当たり前ですが、何回か練習すれば、誰でもできるようになります。いくつか試してみて、いちばん取り組みやすいやり方を見つけておくといいと思います」

また、更年期世代はイライラが激しく、不安や焦り、落ち込みなどネガティブな感情を抱きやすい。

「これは更年期特有の傾向だと認めて、今の時期はある程度仕方ないと割り切ることも必要です」

更年期の特徴を知らず、イライラの正体がわからないままだと、余計にイライラして冷静な判断が難しくなり、仕事や家庭生活にも影響して、さらにイライラが募る悪循環に陥りがちだという。

「パートナーや家族に話して、更年期の特徴を理解してもらうことも、ときには重要です」

最後に、戸田さんはこう話した。

「怒りは、悪い感情でも、抑えねばならない感情でもありません。たとえば、傷つくことをされたときに怒ることができずに作り笑いで受け流してしまい、あとからもやもやしたこともあるでしょう。だからこそ、怒りの感情とうまく付き合うことが大切。怒るべきときに怒り、怒らなくてもいいときは怒らずに済むようになって、後悔しないようにしましょう」

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