コロナ対策転換も「9波」備えを 岡山県 8日に5類移行で呼びかけ

森隆之・新型コロナウイルス感染症対策監

 3年以上にわたって猛威を振るい続けてきた新型コロナウイルスは、8日から感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられる。ウイルスの弱毒化や世界の流れを踏まえた対応。感染者の全数把握は終了し、特別措置法に基づく緊急事態宣言などはできなくなる。コロナ対策は大きな転換点を迎える一方、流行「第9波」が今後起きる可能性も否定できず、岡山県は引き続き一定の感染対策を呼びかけていく。

 感染症法で「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられ、2類相当とされてきた新型コロナ。5類移行に伴い、感染拡大を防ぐ緊急事態宣言の適用外となる。現在行っている患者の全数把握は取りやめ、一定の医療機関の調査から推定する体制に変更する。岡山県内では84医療機関の定点把握となり、県が定点当たりの患者数を1週間に1回公表する。

 感染症法に基づく患者への入院勧告、感染者や濃厚接触者に対する外出自粛要請はなくなる。自己検査の陽性者を確定診断する陽性者診断センターや宿泊療養施設の運営、自宅療養者への食料品配送なども7日で終了する。

 一方、各保健所などが行う受診相談や体調急変時の相談体制は継続。重症化リスクが高い高齢者が入居する施設については、抗原検査キットを使った職員の定期検査や感染予防研修、クラスター(感染者集団)発生時の感染管理支援や看護職員派遣を引き続き行う。

 医療提供体制は県内約660医療機関で対応しているコロナの外来診療に関し、5類移行後は全ての内科や小児科、耳鼻咽喉(いんこう)科の約1100施設で応じられるようにする方針。入院の受け入れは75施設から約160施設への拡大を目指す。

 医療費は検査料などが新たに自己負担となる。重症化予防を狙いに継続するワクチンは、2023年度中は無料で受けられる。

 県は5類移行後も手洗いや換気など基本的な感染対策に加え、医療機関や高齢者施設を訪問する際のマスク着用を推奨。高齢者らのワクチン接種を求めていく。

 新型コロナウイルスの感染症法の位置付け 感染症法は、さまざまな感染症を広がりやすさや症状の重さに応じて原則1~5類に分類し、取れる措置を定めている。1類が最も危険度が高い。新型コロナウイルス感染症は当初、結核や重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じ2類に相当する対応を取ったが、現在はより幅広い措置が可能な「新型インフルエンザ等感染症」に当たる。5類になれば季節性インフルエンザと同等。

状況やリスク判断して 県感染症対策監に聞く

 新型コロナウイルスの「5類」引き下げに伴い、生活はどう変わるのか、今後は何に気を付けるべきなのか。森隆之・岡山県新型コロナウイルス感染症対策監(54)に聞いた。

 流行当初、新型コロナは未知のウイルスだったが、ウイルスの変異やワクチン接種の普及で重症化しにくくなった。今ではお年寄りらリスクの高い人を除き、通常の医療で対応できる。5類移行はこうした状況を踏まえ、コロナ以前の日常を取り戻す狙いもある。

 移行後の感染対策で県は、県民・事業者に対し、効果的な場面でのマスク着用や手指消毒、換気など基本的な感染対策を呼びかけている。感染状況やリスクを判断して対策を行ってもらえれば。抗原検査キットや解熱剤をあらかじめ用意するなど備えも大切だ。

 今後は感染しても法に基づく外出自粛は求められないが、厚生労働省は発症翌日から5日間は外出を控えることとしている。のどの痛みなどが続く場合、症状が治って24時間程度は様子を見たほうがいい。発症後10日間はマスクを着けるなど周囲に配慮してほしい。

 県内では感染者が緩やかに増加している。春になって人の移動や接触が活発になっているためだろう。ゴールデンウイークはさらに人が動く。全国的にオミクロン株派生型「XBB・1.5」系統の割合が増えていることも懸念材料だ。流行「第9波」が到来する可能性も指摘される中、県としても状況を注視しながら対応を検討していく。

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