「見通しのよい交差点」なのに事故多発の謎… 全国で発生「コリジョンコース現象」とは?

別名「十勝型事故」と呼ばれるワケは...(弁護士JP編集部)

ゴールデンウィーク中は車で旅先へ向かったり、レンタカーを借りてドライブする予定の人も多いのではないだろうか。

慣れない道では、いつも以上に慎重・安全な運転を心がけたいもの。中でも気を付けたい場所は、田畑が周囲に広がっており、一見すると事故が起きづらそうな「見通しのよい交差点」である。

このような場所では、相手の車が止まって見えたり、近づいてきたことに気がつかなかったりする「コリジョンコース現象」が起きやすく、車同士が出合い頭に衝突する事故が各地で繰り返し発生している。

「目の錯覚」が引き起こす現象

コリジョンコース現象について、JAF(日本自動車連盟)では「錯覚が引き起こす事故原因のひとつ」と説明している。

人間の視野は、物の色や形を高解像度で認識する「中心視野」と、大まかな情報で認識する「周辺視野」に分かれている。同じ交差点に向かってくる交差車両(例:下図ピンク色の車)がいた場合、ドライバーは「周辺視野」でとらえやすい。

JAF「見通しのいい交差点に潜む危険『コリジョンコース現象』とは?」(https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-accident/subcategory-counterplan/faq161)より

直角に交わる見通しのよい交差点で、自分の車と同じ速度・角度で近づいてきた交差車両を「周辺視野」で認識した場合、ドライバーは相手の車が動いていないように見えてしまい、直前まで危険を認識できないのだという。

JAF「見通しのいい交差点に潜む危険『コリジョンコース現象』とは?」(https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-accident/subcategory-counterplan/faq161)より

また、同じ速度・角度で交差点に向かっている交差車両は、フロントピラー(フロントウインドーを支える左右両端の支柱)に隠れて交差点に進入するまで気がつかないこともあるため、注意が必要だ。

1~4月も全国で事故続々

コリジョンコース現象は北海道・十勝地方で多く発生したことから別名「十勝型事故」とも呼ばれている。ただし、周辺に田畑が広がっているなど見通しのよい交差点であれば、どこでも起こり得る事故であることは言うまでもない。

今年に入ってからも、福島県郡山市(1月2日)、山形県酒田市(3月6日)、愛知県稲沢市(3月30日)、熊本県宇土市(4月4日)と、全国各地でコリジョンコース現象が原因と考えられる事故が発生している。

真っすぐに道が続く十勝地方の道路(弁護士JP編集部)

カーナビにも直角に交わる交差点が表示されている(弁護士JP編集部)

コリジョンコース現象を回避するには

JAFは「コリジョンコース現象を回避する対策としては、走行中に頭や目線を左右へ向けて、意識的に目線を違う方向に移すことが挙げられます」「信号機のない交差点では十分に減速して左右の安全を確認しながら通行することが大切です」と事故に遭遇しないための注意を促している。

また、コリジョンコース現象の発生リスクが高い場所では「交差点あり」の標識を設置する、路面に「交差点注意」の文字を記載する、減速帯を設けるなどの対策がされていることもあるようだ。ドライブの際には、それらにも注視したい。

平たんな道路が真っすぐに延びて見通しがよく、しかも交差点に信号がないような道路では、開放感からスピードを出してしまいがちだ。しかし、一見すると事故リスクの低そうな場所にこそ危険が潜んでいることを肝に銘じて、ドライブを楽しむべきだろう。

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