女王蜂「回春(feat.満島ひかり)」-どこまでが演技でどこからが彼女自身なのか

2015年に発売された4thアルバム『綺麗』に収録されている「売旬」は、許されない男女の恋をアヴちゃんが1人2役演じるようにかけ合って歌い、その後、篠崎愛、志磨遼平とのコラボver.がリリースされた。 その「売旬」から8年、同じメロディで2人の恋が再燃していく火種のような瞬間を歌った続編、「回春」が発表された。今年2月にリリースされた『十二次元』に収録されているのはアヴちゃんが1人2役演じたもので、こちらは女性役に女優、満島ひかりを迎えてのコラボver。『綺麗』を作るという目的のために出口のない恋をしてボロボロになったという捨て身の逸話に当時驚かされたが、8年後にこの「回春」を発表するということまでおそらく織り込み済みだったのだという策士ぶりには面食らった。ステージでの刹那的に命を燃やすような本能の部分と、解離的に俯瞰した視点で自己プロデュースをする策士の面との妙、どこまでが演技でどこからが彼女自身なのか、淡々と脈打つリズムと切ないメロディで男女がかけ合うこの曲には、それらがよく体現されている。そういう意味でアヴちゃんに似通った部分を強く感じる満島ひかりの歌唱(というか演技)はこの曲にぴったりだし、他者が加わり、アヴちゃんが男性役に回ることで、オリジナルver.よりもぐっと多角的に視野が広がって曲の深みが増している。(Text:小野妙子 / LOFT9 Shibuya)

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