ドクターカー、どうすれば気づきやすく? サイレン、車体色を研究 八戸工大と八戸市民病院(青森県)

八工大が所有する研究用の緊急車両。八戸市立市民病院のドクターカーも手前の車両とほぼ同じ色とデザインとなっている(同大提供)
昨年9月、救急車のサイレン音を測定する学生ら=八工大構内=八戸工業大学構内(同大提供)

 八戸市立市民病院の医師らを乗せて患者がいる現場へ急行するドクターカーに、周囲が認識しやすい独自のサイレン音と車体色を導入しようと、八戸工業大学と同病院が昨年から共同研究を進めている。一般車両の遮音性向上などで運転者がドクターカーのサイレン音に気づかず、さらに救急車に比べて高さがない車両のため視覚認識されにくいことから、交差点で一般車とあわや衝突という事例が後を絶たないという。事故リスクを低減することで現場到着時間の短縮が図られ、救命率向上が期待される。

 現在、同病院に常駐するドクターカーは3台で、いずれもサイレンは救急車と同じ「ピーポー音」、白い車体に赤と青の模様となっている。

 同病院の今明秀事業管理者らによると、2010年の運行開始当初はドクターカーの運転手が出動10件に1件の割合で衝突などの危険回避のため急ブレーキを踏む場面があった。最近は市民への認知度向上やドクターカー運転手の技術向上などにより急ブレーキの回数が減少。それでも交差点通過中、側方から減速せずに車が接近し、乗務する医師らがひやりとする場面が少なくないという。

 こういった事例を受け、同大工学部の浅川拓克准教授は昨年、救急車やドクターカーに用いられる「ピーポー音」と、外国の緊急車両などの「ヒュンヒュン」という「YELP(イエルプ)音」について、車内外での聞こえやすさを比較するため音響装置で測定。その結果、イエルプ音の方が人の耳に聞こえやすい音質で、さらにエンジンやエアコンをかけた車内でも聞き取りやすい周波数の音と判明した。

 浅川准教授は「他の緊急自動車と区別できるドクターカー独自のサイレン音にするのが望ましい」と考え、今後はイエルプ音を含め認知されやすい周波数帯のサイレン音の検証に取り組む。同時にユニバーサルデザイン(UD)の車体の研究を進め、視覚障害者にも認識しやすい青系の車体色の導入を検討する。

 緊急車両に関する法令や通知では、救急車の車体は白、サイレンはピーポー音と定められている。一方、ドクターカーは道路運送車両法では車体色、サイレン音とも規定はない。浅川准教授は国土交通省東北運輸局や同青森運輸支局、自動車技術総合機構、県警などにサイレン音と車体色の変更について相談し、変更後も公道での走行が可能かを照会している。

 共同研究は浅川准教授、今事業管理者のほか、同大工学部の小藤一樹教授、同大感性デザイン学部の安部信行准教授、同病院救命救急センターの野田頭達也所長と吉村有矢副所長の6人で進めている。浅川准教授は昨年11月、日本病院前救急診療医学会学術集会でドクターカーのサイレン音に関する研究成果を発表した。

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八戸圏域ドクターカー 八戸市と周辺7町村でつくる八戸圏域連携中枢都市圏の事業として、2010年3月末に運行を開始。消防の出動要請を受け、八戸市立市民病院の運転手が医師らを乗せて現場へ向かう。ドクターヘリが出動できない夜間や悪天候時などに活躍。22年度の出動件数は1525件で、運行開始から同年度末までの累計出動件数は1万7千件超に上る。

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