ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したインディアン座の渦巻銀河「JO175」

こちらは南天の「インディアン座」の方向約6億5000万光年先にある渦巻銀河「JO175」とその周辺です。JO175は銀河団「ACO 3716」を構成する銀河のひとつ。明るい中心部分を取り巻く渦巻腕(渦状腕)は非対称で、右側から下へと伸びた腕は左側の腕よりも大きく広げられているように見えます。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河「JO175」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team)】

欧州宇宙機関(ESA)によると、JO175は「Jellyfish Galaxy(クラゲ銀河)」のひとつに数えられています。クラゲ銀河とは、流れ出たガスが連なったような構造を持つ銀河のことで、触手を伸ばしたクラゲの姿にも見えることからそう呼ばれています。JO175の場合、大きく広げられた渦巻腕や銀河円盤の片面からガスが流れ出ているといいます。

クラゲ銀河の“触手”は、銀河からゆっくりとガスが剥ぎ取られたことで形成されたと考えられています。銀河の集合体である銀河団では、銀河と銀河の間が銀河団ガスで満たされています。銀河が銀河団の中を移動する時、このガスから動圧(ラム圧)を受けて自身のガスを少しずつ剥ぎ取られた結果、後方に伸びた“触手”が形成されたのではないかというわけです。

関連:6億光年先のクラゲ銀河「JO204」 触手のような構造の正体とは(2023年4月14日)

この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルター合計6種類を使用)をもとに作成されています。ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡によるJO175の観測は、クラゲ銀河の“触手”にみられる星形成活動に関する研究の一環として行われました。こうした“触手”は極端な環境における星形成の一例を示しており、宇宙の他の場所における星形成の過程を理解する上で役立つ可能性があるということです。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2023年5月1日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team
  • ESA/Hubble \- Ghostly galactic jellyfish

文/sorae編集部

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