真備をキッチンカーで盛り上げ 文化施設に定期出店 にぎわい創出

 倉敷市真備町箭田の文化施設・マービーふれあいセンターに、キッチンカーが定期的に出店し人気を集めている。2018年7月の西日本豪雨で被災した住民の「真備をキッチンカーで盛り上げたい」という思いが広がった。来館者の利用だけでなく、こだわりの味目当てに訪れる客もおり、にぎわい創出に一役買っている。

 石窯ピザにおにぎり、ホットドッグ、レトロ喫茶店風ミックスジュース…。週に数回、センター正面玄関付近の屋外にキッチンカーが数台並ぶ。香ばしい匂いや甘い香りが漂い、家族連れらが次々と来店。店主との会話を楽しみながら注文し、近くのベンチに腰かけ頬張る姿が見られる。

 倉敷市立老松小4年女子(9)は果物のジュースを飲み「甘酸っぱくておいしい」と笑顔。キッチンカー巡りが趣味という主婦(60)=同市=は「ここには初めて来たが、雰囲気が良い。機会があればまた訪れたい」と満足そうだった。

 出店が始まったのは22年8月。きっかけは、ホットドッグなどのキッチンカー「舞虹花(まこか)」を営む前田真美さん(50)=同市=からセンターに入った出店を打診する電話だった。

 前田さんは豪雨時に真備町内の夫の会社を訪れていて被災。ボートで避難する際、センターの前を通過したときの悲惨な光景が今でも目に焼き付いているという。「復興は着実に進んでいるけれど、もっと元気にしたい。最初は1台でも、仲間に声をかけてどんどん増えたら楽しいことになるかもという気持ちだった」と振り返る。

 真備町地区最大の公共施設の同センターも、豪雨で被害を受け21年6月に再開した。芸能祭やロビーコンサートなど活性化へさまざまな催しを企画しているが、徒歩圏内に飲食店が少ないのが課題だったという。

 提案を受け「来館者のニーズに応えられる」と受け入れを検討。福山市など公的機関にキッチンカーが出店する他自治体の事例を参考に、料金や時間などの要項を定めた。

 前田さんの紹介や口コミで少しずつ広がり、近年のキッチンカーブームも相まって出店希望者は増えてきた。3月末現在で倉敷、岡山市などの19台が登録。予定はセンターの公式ホームページや各店の交流サイト(SNS)で確認できる。出店日には駐車場出入り口にのぼり旗を掲げ、通行人や車にも知らせている。

 センターの小野行弘館長は「期待以上の反響で手応えを感じている。新たなスポットとして定着させ、真備に足を運んでもらうきっかけにしたい」と話している。

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