残り5周で起きた悲劇……3位表彰台を失った平手晃平「チームに申し訳ない」、近藤真彦監督「プッシュさせたデメリットが出た」

 450kmの長丁場レースで、一度もフルコースイエローやセーフティカーが出ない展開となったスーパーGT第2戦富士。GT500クラスはau TOM’S GR Supraがレース後半に独走状態を築いたが、そこにピットストップのタイミングを遅らせるなど最後まで果敢に攻めていったのが、近藤真彦監督率いるリアライズコーポレーション ADVAN Zだった。

 予選5番手からスタートし、第1スティントでは佐々木大樹が積極的に順位を上げ、2周目には3番手に浮上。そのまま終盤まで表彰台圏内に絡む力強いレースを披露した。

 39周目に1度目のピットストップを行い、平手晃平にドライバー交代すると、第2スティントも安定したペースでトップを追いかけ、上位集団では一番遅い78周目に2度目のピットストップを行い、フレッシュタイヤを投入。36号車とは大きな差がついてしまったが、2番手を走るSTANLEY NSX-GTの攻略に向けて、プッシュを開始した。

 当初、100号車とは7秒近いギャップがついていた24号車だが、平手は84周目にチームベストとなる1分29秒510を記録すると、着々と100号車との差を詰めていき、残り6周を迎えるころには3秒後方まで近づいていた。

 このままいけば、逆転での2位も現実を帯びてきていたのだが、95周目のダンロップコーナーでGT300のマシンと接触してしまい、ラジエーター周りを破損。水漏れを起こしてしまい、無念のピットインを余儀なくされた。

 公式映像ではその瞬間の様子は映っていなかったが、当時の状況について「目の前で5号車と244号車が競り合っていて『何か起きそうだな』と思って、マージンをしっかり持ってコーナーに入りました」と平手。“右、左”と連なるダンロップコーナーの“左コーナー部分でアクシデントが起きたという。

 左コーナー部分で、244号車に接触した5号車が、その反動で大きく失速。それが予想以上の度合いだったこともあり、平手は避けきれずに5号車に追突する形で自車の左フロント部分をぶつけてしまった。

「あそこで何か自分にできたかと言うと……目一杯プッシュしていましたし、目の前の状況も把握してマージンをとってコーナーに入ったつもりでしたけど、予想だにしないことが起きてしまいました」と、レースを終えた後の平手からは「悔しい」という言葉に加え、「申し訳ない」という言葉も出てきた。

「本当に悔しいです。でも、チームはもっと悔しいと思うし、何より近藤監督には残り5周で表彰台から溢れてしまったので……僕としては申し訳ない気持ちです。でも、あれはドライビングミスでも何でもないと、自分のなかで言い聞かせないと。自分を責めても、結果は返ってきませんからね。次の結果を獲りにいくしかないです」と前向きに語ろうとするも、悔しさを抑えきれない様子だった。

 KONDO RACINGとしては、GT300クラスでリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが優勝を飾ったが、チェッカー目前で表彰台圏内を争っていた24号車が脱落してしまい、56号車の優勝に対しても心の底から喜び切れていない表情をしていた。

 24号車の話題になると「悔しいですね」と開口一番の近藤監督。「(最終スティントは)タイヤの温度も安定して、路面温度も少し下がってきて、うちのペースになっていました。プッシュして、前の100号車を抜こう!という雰囲気になっていました。3位キープではなくて、2位を獲りにいくと決めて、ピットからもプッシュという指示を出していました。そこで攻めたことに対するデメリットが出てしまいました」と、当時の状況を振り返った。

「後ろも離れていたので、3位キープであれば問題なかったかもしれません。ただ、あの時はメカニックもエンジニアも『プッシュ!プッシュ!』となっていました。その影響もあったかもしれません。ただ、安全にレースをやって、3位で満足していたら勝つことはできないですから……いい勉強になりました」

 24号車としては、残念な結果となってしまったが、レースの内容を振り返るとポジティブだった点も多い。特に際立ったのが、ヨコハマタイヤと24号車のコンビネーションだ。

 前日の予選後も、平手が手応えを語っていたのだが、実際に決勝レースを走ってみて、近藤監督も同じような手応えを掴んでいた。

「僕は、ヨコハマと長い間仕事をしていますけど、何年かに1回『おっ!』って思うやつが出てくるのですけど、今回それに当たったかもしれないです。すごく頼もしいタイヤが出てきました」と近藤監督。実は、2回目のピットストップではタイヤ無交換も選択肢のひとつとして考えていたとのことだ。

「(平手)晃平にも『20周行けるか?』と聞いたら『多分、大丈夫だと思います』と言ってくれました。ただ、色々とこっちで計算をして、最後はフレッシュタイヤで行こうとなりました。結果的に、交換して正解だったと思います」と、当時の状況を明かした。

「でも、昔は『早く(ピットに)入れて!』とドライバーから無線で言われていたのが、今回は余裕でした。だから、この順位にいれば、いつか勝てると思います」と24号車のポテンシャルの高さを評価する近藤監督。展開次第では、両クラス制覇の可能性もあったのだが「一瞬(頭に)よぎったけど……そんなに甘いものではないじゃないですからね」と、引き続きチーム全体で精進していきたいと語った。

左フロント側からGT300と接触し、冷却水が漏れてガレージイン。そのままレースを終えることになった

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