<社説>こどもの日 ケアラー支援 法整備急げ

 大型連休の公園は子どもたちの笑顔があふれている。コロナ禍で外出を控えていたここ数年の「こどもの日」とは打って変わって、のびのびと過ごす子どもたちの姿がほほえましい。 しかし、外出したくても、なかなかできない子どもたちが県内に多数いることを忘れてはならない。

 県内の小学5年生から高校3年生までの全児童生徒13万6605人を対象に昨年9月~10月に実施した県の調査で、家族の世話を「週3日以上」または「週2日以下だが1日当たり3時間以上」しているというヤングケアラーと思われる児童生徒が、全体の5.5%、約7450人に上ることが明らかになった。世話をする頻度は小、中、高校生のいずれも約3割が「ほぼ毎日」と答えている。

 この連休も、家事や家族の世話などに追われている子どもたちが県内に数千人単位で存在するものとみられる。

 調査ではこうした家庭内のケアによって、心身に疲労を感じている児童生徒の存在も一定数いることが判明した。地域社会全体で向き合うべき喫緊の課題だ。ヤングケアラーを支援する法整備も急がなければならない。

 英国では1980年代にヤングケアラーが社会的課題として認知された。2011年の調査によると、ヤングケアラーの子どもたちはそうでない子どもたちと比べて幸福度が低く、10人に4人が悲しみを感じていることが調査で明らかになった。4人に1人が孤独、2人に1人が怒りを感じているとも報告された。

 調査結果を公表した英国の王立小児科小児保健学会(RCPCH)は「ヤングケアラーはいじめられていたり、学校を欠席、または授業中に居眠りしたりしている可能性が高い」と指摘している。

 家庭内での義務を負わされ、自由な時間を持つことができないことは健全な発育や人間関係の構築に影響を及ぼす恐れがあるとして、英国では14年にヤングケアラーの支援を義務化した法律が制定された。地方自治体に対し、行政区域内のヤングケアラーを特定した上で適切な支援につなげることを義務付けている。

 家事、病気や障がいがある家族の世話に追われ、学業がおろそかになり、友人たちとの交流の機会を失ってしまうのは児童生徒にとって不幸だ。こうした子どもたちの存在に気付いていながら、人ごととして放置してしまうことがあってはならない。地域や行政が支援の手を差しのべることが必要だ。

 厚生労働省は対策を推進するプロジェクトチーム(PT)を発足させたが、支援を義務付ける法整備は進んでいない。子どもたちが健やかに成長し、将来に希望を抱けるよう、安定した生活環境の確保と社会の温かいサポートが欠かせない。それを確かなものとするため、日本も法整備を進めるべきだ。

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