匠の美と味 四季折々 愛され全国博覧会で受賞も 和菓子店「大石堂」(市原市) 【房総老舗巡り 千葉県誕生150周年】(1)

「大石堂」の新店舗で、受賞盾を手にする布施社長=市原市

 創業110余年。布施浩昭社長(63)は約40年前に経営を引き継いだ4代目店主。大正時代初め、千葉市内の和菓子店で修業した曾祖父(故人)が、市原市内に店を構えたのが始まり。以来、匠(たくみ)の技が織り成す美と味を脈々と受け継ぎ、頑固に守り続けている。

 転機が訪れたのは10年前。それまでJR五井駅西口にあった店舗は大宮神社参拝者らの人気を集めていたが、周辺の区画整理事業に伴い立ち退きを迫られた。客離れを心配したが一大決心し、3キロ離れた東口の開発地域に移転し再出発。モダンな外観に生まれ変わった新店舗は上総更級公園近くにあり、旧店舗から移築した芸術的な欄間や障子も見ることができる。

 新旧がマッチした建物に引っ越し後も客足は絶えることはなく、代々買い求める常連客や茶席を開く茶道教室指導者らの支持を集めるほか、公園を訪れる若い世代にも手作り菓子の素晴らしさをアピール。この季節は柏餅が早々に売り切れる日が続いている。

 四季折々の花や植物をモチーフにした生菓子や、羊羹(ようかん)、饅頭(まんじゅう)など創り出される商品は多種多様。オーダーメードにも柔軟に対応し、おいしく優雅な和菓子の魅力を次世代に伝える。

 ご当地焼き菓子「上総鐙焼(かずさあぶみやき)」(1個151円)は、第24回全国菓子大博覧会(2002年)で名誉総裁賞(意匠部門)に輝いた逸品。市内の上総国分寺跡から出土した鐙瓦の形状をヒントに、卵とバターをふんだんに使い風味豊かに焼き上げた。包装紙には市の花コスモスも描かれ、市原商工会議所は地域を代表する商品「いちはら国府プレミアム」に認定。土産物や贈答品としても喜ばれる。

 布施社長は「味や形、デザインのいい和菓子を追求したい。季節に合わせて登場する多彩な和菓子を楽しみにしてください」と、地域に愛される味が150年、200年と続く日を夢見る。

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 1873(明治6)年6月15日に木更津県と印旛県が合併し誕生した千葉県。150年の節目の年に当たり、県内各地で100年以上続く老舗を紹介する。

◇メモ 住所=市原市更級1の7の1 営業時間=午前9時~午後5時(火曜日定休) 問い合わせ=(電話)0436(21)1051

移転前、五井駅西口にあった旧店舗=1960年代
ご当地菓子の「上総鐙焼」

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