母衝撃、突然学校から連絡「タブレット買って」…高額 必要?疑問の数々 自己負担の埼玉「文房具と同じ」

県立高、1人1台タブレット端末 思わぬ出費に戸惑い

 埼玉県立高校で4月から1人1台タブレット端末の活用が始まった。タブレット端末の購入を公費とするか個人負担とするかは都道府県ごとに異なるが、県教育局は2021年12月に個人負担の方針を決めた。一方、生活困窮世帯などの支援団体には、入学を前に保護者から「個人で購入することを知らなかった」と思わぬ出費に戸惑いの声が多く寄せられたという。各校には購入が難しい生徒のための貸し出し用端末が用意されているが、22年度に先行導入した高校での貸し出し数はごくわずかだった。

 新年度から長女(15)が県西部の県立高校に入学した女性(41)は、タブレット端末の購入を3月下旬に入学資料で知った。どのような授業に使うのか、子どもの自由に使っていいのか、詳しい説明はなかったという。娘は学校を休みがちで入院も経験したためか、「夏休み前に学校で配布した」(県教育局ICT教育推進課)というリーフレットは手元に届いていない。

 小学生の息子も含む3人暮らしの母子家庭。生活保護を受けており、生活に余裕はない。高校に相談すると「基本は自分で用意してほしい」。自治体のケースワーカーからは「貸与があるはず」と言われて板挟みになり、約13万円のタブレット端末を購入。品切れで安価なモデルは選べず、通信費を含む月約4500円で4年間の分割払いだ。光熱費や食材費の高騰も家計に重くのしかかる。

■入学の出費負担重く

 生活保護におけるタブレット端末購入費は全額負担の「教材費」となるが、貸し出しの活用などを検討することが前提。生活保護受給世帯以外でも、公立高校入学時には制服代や教材費など約20万円が必要といわれ、さらにタブレット端末本体は文部科学省の指定に準じると約4万5千円。故障や紛失の保証、業者による整備費などが上乗せされる場合もあり、負担は大きい。

 県ICT教育推進課は個人負担とした理由について、「授業以外でも自由に使え、『主体的な学び』としての学習効果も高められる」と説明。「情報活用能力のある生徒育成が求められており、タブレット端末は文房具と同じ」と理解を求める。一方、昨年度まで県立高校に勤めていた男性(59)は「校内では『どんなスペックか』『価格はどのくらいか』という話ばかりで、どう授業に活用するかの議論が後回し。そもそも1人1台が本当に必要なのか、学校の特色によっても異なる」と疑問を呈する。

■貸し出し「足りるのか」

 同課によると、貸し出しのタブレット端末は生活保護受給世帯などが対象の「奨学のための給付金」受給率を基に算出し、給付を受ける生徒向けに少なくとも各校59台を整備。先行して前年度から1人1台端末を導入した県立高校は14校あり、同課の聞き取りによると、貸し出し数は1校に1、2台程度。「3学年分で十分な数とみている」とする一方で、「学校側からは『それで足りるのか』という声もある」と話す。

 子どもの学習支援や子育て世帯の見守り事業に取り組む「彩の国子ども・若者支援ネットワーク」の土屋匠宇三代表理事は「このタイミングでタブレットが必要だということを知らなかったという人がほとんど。経済的に困っている世帯は特に、学校の情報を把握できていない場合も多い」と指摘。「学校側からすれば故障や紛失の可能性もあり、積極的には貸しづらい。全員貸し出しが必要という学校もあるはずで、実態を踏まえていない」と話した。

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