5類移行 コロナ外来受け入れ準備 岡山県内、院内感染 根強い不安も

 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が8日から5類に移行するのを受け、コロナの外来診療をしていなかった医療機関の多くが受け入れ準備を進めている。感染対策の緩和で診療時の負担が軽減されるためで、岡山県は対応施設を現在の1.6倍に拡充したい考え。しかし高齢者が多く通院する診療所などは院内感染への不安が根強く、対応施設がどこまで増えるかは不透明だ。

 「他の感染症と同じ扱いになるなら、子どもの感染は小児科で診察する方がいい」。小児科の大野はぐくみクリニック(岡山市北区奉還町)の大野繁院長はコロナ対応に意欲を見せる。

 一般患者との動線を分けるスペースや人員の確保が難しく、これまで発熱患者には対応施設を紹介していたが、感染対策の緩和を受け、院内の別室で診療することにした。大野院長は「患者が集中する一部の医療機関の負担も減る。可能な限り協力したい」と話す。

HPで公表

 国は5類移行に伴い、診療時の感染対策を見直した。診察ごとに医師らのガウンとマスクを交換し、専用の診療室を設けて一般患者と動線を分離するよう求めていたが、いずれも施設の判断に委ねることにした。

 岡山県はこうした見直しを踏まえ、コロナの外来対応施設を現在の約660施設から、段階的に県内全ての内科、小児科、耳鼻咽喉(いんこう)科計約1100施設まで広げる方針だ。コロナが5類感染症となり、医師法上、原則診療拒否できないこともその根拠としている。

 「インフルエンザと同様に幅広い医療機関で診てもらえるよう働きかけを強める」と県新型コロナ対策室。受け入れ準備が整った施設から「外来対応医療機関」として順次指定し、ホームページで公表するという。

対応に苦慮

 しかし、診療時の負担が軽減されても感染力に変わりはなく、対応に苦慮する医療現場は少なくない。

 遠藤クリニック(真庭市蒜山上福田)は待合室を分けてコロナ診療に対応する予定だが、85歳の遠藤英利院長が1人で運営しており、患者も大半が高齢者。遠藤院長は「自分が感染すれば地域医療に多大な迷惑をかけてしまう」と話す。

 「診療しなくてはいけないが、敷地が狭いので正直不安」と漏らすのは倉敷市の耳鼻咽喉科クリニック院長。県南部で内科診療所を1人で切り盛りする80代医師は「発熱患者を診るか決めかねている」とし、「流行『第9波』が到来したら、とても対応できそうにない」と打ち明ける。

 県医師会の松山正春会長は「目と鼻、口の感染経路を確実に防げば、動線分離が難しい小規模施設でも受け入れは可能」とし、「重症化する前にかかりつけ医で早く診られる体制の整備が大切だ。県と共に協力を呼びかけていきたい」と話している。

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