<社説>ハラスメント対策 自治体、企業も積極対応を

 ハラスメント(嫌がらせ)に苦しむ人が誰にも相談できず、一人で苦しむような職場環境を改めなければならない。そのことがハラスメント抑止になり、休職や離職の防止にもつながる。 県は2023年度、県庁内の「ハラスメント防止に関する指針」を改定し、対策を強化する。被害者の訴えのみに頼ることなく積極的に調査をする。部下が上司にハラスメントを指摘しやすくする環境整備も検討する。

 これまでは相談者の了解を得て、身分を明かした上で調査した。そのため相談者が調査を求めず、人事異動を希望する例が多かった。これでは問題の解決にはならない。ハラスメントの行為者は相手を苦しめているという自覚が乏しいためだ。

 対策を強化することで職員の休職や離職を防ぎ、事務の効率化を図る狙いがある。ハラスメントを原因とした休職や離職が頻発すれば、他の職員に業務負担がのしかかり、職場環境が悪化する。

 パワハラやセクハラを未然に防ぎ、発覚時には直ちに対処することは働く人を守ることであり、職場を守ることでもある。県内自治体や民間企業もハラスメント対策を積極的に進めてほしい。

 20年6月に施行された女性活躍・ハラスメント規制法は、企業にパワハラ防止対策を義務付けている。施行に合わせて、精神障がいによる労災を認定する際の基準に、新しくパワハラが加わった。

 パワハラ規制法は「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で就業環境を害する」とパワハラを定義する。パワハラに該当する行為として暴行や傷害などの「身体的な攻撃」、遂行不可能な仕事を強制する「過大な要求」などがある。

 セクハラ対策として県がハラスメント防止に関する指針を策定したのは1998年である。2011年にパワハラ、21年にマタニティーハラスメント(妊娠・出産を巡る嫌がらせ)を加えた。時代の変化に伴い顕在化する「新たな形のハラスメント」への対処が必要となっている。

 県によると職員からのハラスメント相談件数は毎年10~20件程度でハラスメント認定件数は例年1~2件にとどまる。しかし、職場におけるハラスメントは被害者が声を上げない限り、潜在化する可能性がある。

 厚生労働省が21年4月に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書によると、パワハラやセクハラが発生する職場の特徴として(1)上司と部下のコミュニケーションが少ない(2)ハラスメント防止規定が制定されていない(3)失敗が許されない(4)残業が多い―などの傾向がある。

 ハラスメントを防ぐためには防止規定の策定とハラスメント行為に及んだ者の指導・処分に加え、風通しの良い職場づくりが求められる。自治体や企業は意識してほしい。

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