「このままでは伝統ある部が残せない」名門高校応援団“1人団長”が踏み切った令和スタイル

静岡県立掛川西高校の応援団は70年以上の歴史がある部活動ですが、部員がたったひとりしかいません。少子化に加えて、新型コロナによる声出し応援の禁止。このままでは応援団を残せないと感じた団長は、令和のスタイル変更に踏み切りました。

<応援練習>

「ソヤ—」

掛川西高校応援団指導部第75代団長の村松真広さん(3年)。たったひとりの応援団です。代々受け継がれてきた演舞を毎日2時間繰り返します。

<掛川西高校応援団指導部第75代団長 村松真広さん>

「選手に、共に戦い頑張ろうと言えるような存在になることが大切だと思っています。そのためには選手に見合うような努力をすることが必要だと思います」

応援団の見せ場といえば、野球応援。甲子園に何度も出場してきた強豪・掛西野球部をアルプススタンドから代々支えてきました。しかし、新型コロナによって声出し応援が禁止されたこともあってか、2022年の新入部員はゼロ。23年は、村松団長1人になってしまいました。

団長はこのままでは伝統ある部を残せないと、応援団を令和のスタイルに変えることを決意しました。

毎年、新入生に向けて行う応援練習。1年生の中から選ばれた練習を補助する応援委員と共に、20種類の応援を3か月かけて新入生に教え込みます。

<応援練習>

「返事はどうした!」

掛西の応援指導は厳しいことで昔から知られます。この時、応援団は心を鬼にして新入生に応援の厳しさを伝えるのが伝統とされてきました。村松団長はこのやり方だけでは時代に取り残され、応援の価値が問われる日が来ると感じていました。

<村松真広団長>

「まずは形を覚えて来てください。発声の時にはこのように肘を地面と平行になるように上げてください」

今まででは考えられない丁寧な口調で応援を教えます。生徒の間を練り歩くことも極力控え、給水も積極的に促します。

<村松真広団長>

「全員が前向きに一生懸命応援練習に取り組んでくれることが大切だと思います。前例がないことなのですべてが試行錯誤しながらやることが大変だと感じます」

そして、待望の新入部員が4人も入りました。そのうち2人は女子部員。70年を超える応援団の歴史で女子生徒が入部したのは初めてです。

<村松真広団長>

「部活を存続させることを第一に考えました。興味を持って応援に思いを持ってくれているのであれば断る理由はないと思いました」

村松団長、女子部員も特別扱いはしません。応援団特有の返事も練習も男子と同じです。

<掛川西高校応援団指導部 増田りかさん(1年)>

「野球に関わりたいと思ってマネージャーとしての野球の見学にも行ったのですが、応援の見学に来た時にやっぱりかっこいいと思って応援を選びました」

<掛川西高校応援団指導部 内野心葉さん(1年)>

「もともと声を出すのがとても大好きで自分が声を出せて、しかも周りのみんなをサポートできるっていう部活はここしかないと思ってここに入ろうと思いました」

伝統の部活を残すためにスタイルの変更に取り組んだ令和の応援団長。久しぶりの声出し応援が許される夏はもうすぐそこです。

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