極限環境生物から「魔法の技術」 B‐Lab<甲南大>-大学発ベンチャーの「起源」(80) 

B‐Labの技術は応用範囲が広い(同大ホームページより)

B‐Lab(神戸市)は水に溶けない物質を高濃度で水に溶かす技術を開発する甲南大学発ベンチャー。同大フロンティアサイエンス学部の甲元一也教授が自らの研究成果を実用化するため、2023年1月に設立した。

極限環境で生存可能な生物の老廃物研究が「起源」

甲元教授は人間が生きられない過酷な環境でも生存できる極限環境生物が環境に適応するために利用する老廃物の機能を研究している。研究で合成した誘導体の1つが、細胞内の生体分子の活性や安定性を高める機能を持つことに気づいた。

その誘導体の高濃度水溶液に、水に溶けない物質を高濃度で水に溶かす性質があることを発見。この水溶液を用いることで農業残渣や食品加工残渣などの食品廃棄物からの有効成分抽出、診断薬の検出感度の向上、有害な有機溶媒を使わない化成品の合成などへの応用が期待できるという。

起業に先立つ2021年9月、リバネス(東京都新宿区)が主催するスタートアップ支援のテックプランタープログラム「バイオテックグランプリ2021」で、同社が「最優秀賞」と「AQI(アサヒクオリティーアンドイノベーションズ)賞」を同時受賞している。

提携企業がすぐに試すことができる素材を持っていることに加え、新たな素材や物質を今後も引き続き生み出していく基盤技術を構築する可能性が評価されたという。

6月5日には神戸商工会議所が開く「KCCI Startup Pitch & Meet」に甲元教授が登壇。持続可能な社会を目指す事業を展開するスタートアップ企業としてプレゼンテーションを実施し、ビジネスパートナーの発掘につなげる。

まだ誕生したばかりのB‐Labだが、応用範囲が広い技術をベースとするベンチャーだけに、今後の展開が注目される。

文:M&A Online

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