権利の尊重?差別的? 施行半年、申請ゼロのさいたま市ファミリーシップ制度「子の意思確認」規定見直しへ

さいたま市役所=埼玉県さいたま市浦和区常盤

 埼玉県さいたま市は、性的少数者(LGBTなど)のカップルの子どもを家族として公的に認めるファミリーシップ制度で、毎年1回義務付けていた「子どもへの意思確認」の規定について、見直す方向で検討している。同性カップルの当事者らから、「差別的な内容で、改正を検討してほしい」との批判を受けていた。見直し案は「当初の届け出時のみ」としており、当事者に賛否を問うアンケート調査を開始した。

 市は昨年11月、ファミリーシップ制度を施行。子どもの権利を尊重するとして、子どもの意思を毎年確認する規定を設けた。施行前から批判的な声が強く、同制度を申請した家族はいない。

 当事者の女性カップルは同年12月、「差別的」と訴え、所管する市人権政策・男女共同参画課の担当者と面談した。同課は今年2月、年1回確認する現行制度について、パートナーシップ宣誓をしたカップル39組78人にアンケート調査を実施。回答した29人のうち、8人が「妥当」、21人が「妥当ではない」と答えた。

 同課は調査結果を踏まえ、弁護士ら有識者4人に意見を聴いた。制度の信用度を高めるため、毎年の意思確認は必要との声も出たが、複数人から「年1回は負担が大き過ぎる」との意見が出たという。

 同課はファミリーシップ制度導入の是非についてアンケート調査を実施したものの、制度の仕組みへの意見聴取を行わずに規定を設けた。市議会では、毎年1回の規定に慎重な市議が、当事者の意見を聴く必要性を指摘していた。

 同課は制度の見直しを検討し、毎年1回を改めて、初回のみとする案を決定。4月28日に当事者の42組84人に賛否を問うアンケート調査を郵送した。調査結果を分析し、市議会への報告を経て、規定を改正する方向で検討する。

■子の意思確認「年1回」→「初回のみ」へ 変更に当事者ら「最初から意見聴くべき」

 埼玉県さいたま市に住む当事者の女性(57)は昨年12月、市の規定を「差別的な内容で、改正を検討してほしい」と訴え、市の担当者と面談して話し合った。市が見直しを検討していることについて、女性は取材に「市が気持ちを変えていただけて良かった」と話す一方で、「われわれが話を出さなければ、そのままになっていたかもしれない」と指摘した。

 見直し案は、初回のみとはいえ、子どもの意思確認を求めている。女性は「他の家庭には子どもへの意思確認を行わない。必要な事項なのか、違和感がある。バイアスが根源にあると思う。われわれが生きやすくなるための制度なのに、1回としても、嫌な気持ちになるなら、届け出る人はいないのではないか」と話した。

 市のパートナーシップ宣誓第1号の稲垣晃平さん(31)はアンケートを受け取り、回答を検討している。「異性カップルに、子どもの意思確認を求めない」ことから、初回のみにも疑問を抱いている。市は当事者から仕組みの内容について意見聴取しないまま、年1回義務の規定を設けた。稲垣さんは「そもそも最初から当事者に意見を聴くべきだった」と批判した。

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