宇宙に広がる緋色の領域 超大型望遠鏡VLTが撮影したHII領域

こちらは南天の「とも座」(艫座)の方向にある輝線星雲「Gum 10」の一部を捉えた画像です。横方向の範囲は満月の視直径の約4分の1に相当します(視野は7.04×7.09分角)。赤く染まった星雲を背景に、数多くの青い星々が輝いています。

【▲ 輝線星雲「Gum 10」の一部分(Credit: ESO)】

夕暮れ時の空に広がる雲のようなGum 10の赤色は、電離した水素ガスから放射された赤い光によるものです。このような領域は「HII(エイチツー)領域」と呼ばれています。HII領域の水素ガスは高温の青い星から放射された強力な紫外線によって電離しています。

また、裂け目のように広がっている暗い部分は、星雲のなかでも塵が豊富な領域です。塵には可視光線(特に青い光)を吸収・散乱させる性質があり、向こう側からの光がブロックされることで、地球では塵の濃い部分が暗く見えているのです。

冒頭の画像はチリのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」に搭載されている観測装置「FORS2」を使用し、科学観測の合間に魅力的な天体の写真を撮影・公開するヨーロッパ南天天文台(ESO)の「Cosmic Gems(宇宙の宝石)」プログラムのもとで取得・作成されたもので、ESOから2023年5月1日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESO
  • ESO \- A scarlet cosmic sea

文/sorae編集部

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