大浴場はもちろん、部屋にトイレ付き!「ホテル新今宮」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(14)】

毎月、東京から大阪へと向かっていると、次第に観光客が増えていくのがあからさまに分かる。特にここ数か月は激増という言葉がぴったりだ。全国旅行支援も4月以降も継続が決まり、新型コロナの感染者数もとても少なくなり、もはやコロナ禍とは言えなくなった感もある。ホテル業界、旅行業界は、長い冬を脱したという気持ちで一杯だろう。

3月も大阪へと向かった。往路は毎回同様、成田空港第3ターミナルからジェットスター・ジャパン、GK207便。12時半成田発、14時20分関空着。僕は仕事の関係で成田からのこれより早い便も遅い便も乗れないのでとても重宝していたのだが、4月からはその前後は10時10分発、もしくは14時35分発で、12時半発が無くなってしまうので、個人的には成田空港から大阪へ向かうことができなくなる。おろらくこれが、僕にとっての成田発関空行きの最後のフライト。

関西空港から大阪方面へと向かい、案件をこなした後、僕はまた大阪メトロ御堂筋線の動物園前駅に降り立った。常宿の1泊1,000円台のホテルも良いけれど、世の中はまだ全国旅行支援の期間である。1月、2月と同様に今回も1泊3,000円台クラスの“高級西成ホテル”狙いだ。

楽天トラベルで検索すれば、すぐにうってつけのホテルが見つかった。それが「ホテル新今宮」。

JRと平行に走る大通り沿い。南海電鉄の新今宮駅から至近で、前回に宿泊した「HOTEL SUNPLAZA」の東隣り(右隣り)。なんとも綺麗な外観である。「HOTEL SHIN-IMAMIYA」とアルファベット表記もあり、洒落た雰囲気ととともに外国観光客にも分かりやすさをアピール。入口にはハブチャリというレンタサイクルもあり、時代の流れも感じる。

さまざまな価格設定があったが、僕が選んだのは「エレベーター真横のエコノミシングルルーム 禁煙」タイプだ。1泊素泊まり3,200円(税込)のところ全国旅行支援の20%割引で2,560円(同)。平日なので2,000円分のクーポンがもらえるので、実質560円。

特に海外の旅行客に人気のようだ。アジア系、欧米系さまざまな人たちがロビーにいた。それを象徴するごとく、12か国の外貨に対応した外貨両替機まで。フロントの向かいにも、正面玄関を入った左側にもオープンスペースがあり、フリードリンクも設置されていた。

フロントでチェックイン手続きをした。東南アジア系と思われる女性スタッフが、流ちょうな日本語で館内および全国旅行支援の説明をしてくれた。

エレベーターと宿泊階の廊下は綺麗だった。しかも廊下の幅が、広い。さすがは”高級西成ホテル“と思いつつ、キーを回して部屋のドアを開けた。

そして驚いた。広い! しかもシングルルーム(スタンダードルーム)であるものの、なんとトイレ付き。もっとも、後からウェブサイトで予約内容を確認したら、最初から「トイレ付き」と書いてある。予約の時には「割引前で3,000円台」という価格重視でアクセスしていて、単に僕が見落としていただけなのだが。

そう考えると先月に宿泊した、ほぼ同料金である隣の「HOTEL SUNPLAZA」よりもお得ということになりそう。とはいえ、室内やトイレ自体は古さを感じたので、この時点ではどちらが良いかは判別できなかった。

部屋にはテレビ、冷蔵庫、電気ケトル(しかもT-fal)もあった。タオル&バスタオルも。エアコンも独立型で申し分ない。

ハンガーが2本しかないのは、今回も少しマイナスポイント。でも、フロントでハブラシはおろか、使い捨てブラシ&シェーバーもくれたのはプラスポイントだ。

しばし寛いだあと、恒例の館内探検へと向かった。

他のホテルと少し違って、フロアにより、若干の違いがある。僕が宿泊した9階と8階には部屋しかない。7階には共有のキッチン、3階から5階にはトイレ(4階は女性フロアのようだ、5階には自動販売機&喫煙ブース、という具合。

トイレは部屋も共用部分もウォシュレットではなかったが、清潔に保たれていた。

それと、とても気になったのは2階の部屋。ドアの上部が空いている。これは、あとから確認したらカプセルルームになっている模様。部屋の中に上下のカプセルという造りが、やや斬新に感じた。

ちなみに、2階には洗濯機&乾燥機が設置されたコインランドリーもあった。

そして肝心のシャワールーム。こちらも通常どおり、無問題。シャンプーとコンディショナーが一体化した“リンスinシャンプー”なのが気になる方もいるだろうが、僕的にはそれも無問題だ。

実は「ホテル新今宮」の一番のウリは、10階にある男性専用の大浴場。利用可能時間は16時~24時のみだが、今回は夜にちょっとした飲み会に参加予定で時間が無く、朝に見学だけさせてもらうことにしてシャワールームを使用し、身支度を整えてからホテルを出て、JRで京橋駅近くでの飲み会へと向かった。

翌朝。「ホテル新今宮」のチェックアウト時刻は少々遅めの11時までなので、ゆったりとした気分で大浴場を見学することに。10階にはオープンスペースがあり、自動販売機も設置されていた。スペースでは中華系旅行者の団体がミーティングをしていて、一瞬、ここが日本だかどこだか分からない錯覚に陥った。

その反対側が大浴場だった。稼働は24時までゆえに、もちろん水と化していたが湯船も広く、朝ということもあるが、なんとも明るい晴れやかなオーラがただよっていた。

しかもサウナルームまで!(18時~22時のみ)

ほぼ同料金である隣の「HOTEL SUNPLAZA」は朝も大浴場が使用できるが、前回のように混んでいて断念することもある。こちらは部屋にトイレがある。しかしウォシュレットは無い。館内全体では少し古さを感じる。けれどアメニティは歯ブラシの他にシェーバー、ブラシまで付く。

チェックアウトをして外に出て、通りから両ホテルを眺めながらどちらが良いだろうか?と少し悩んだが、結局はどちらも甲乙つけ難く、どちらも素晴らしい“高級西成ホテル”という結論に達した。

晴れていた。春を感じた。

このままコロナ禍になる以前の日常に戻って欲しいと、思った。

■プロフィール

はんつ遠藤

1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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