作家・中上健次のメモ発見 憧れの大江健三郎作品を激賞

中上健次が大江健三郎さんの初期作品を分析したメモ(上の3枚)(中上健次顕彰委員会提供)

 芥川賞作家で現代文学の旗手として活躍した中上健次(1946~92年)が生前、ノーベル賞作家大江健三郎さんの初期作品を分析したメモが見つかった。3月に亡くなった大江さんは中上の憧れの存在で「シュールレアリストである大江の面目躍如」などと作品を激賞している。

 中上は和歌山県新宮市生まれ。「岬」で76年、戦後生まれで初めて芥川賞を受賞した。

 文芸評論家らでつくる「中上健次顕彰委員会」が昨秋、中上が仕事場にしていた和歌山県那智勝浦町のマンションの書斎を整理して見つけた。B4判3枚で、大江さんの芥川賞受賞作「飼育」を収録した文庫本に四つ折りにして挟まれていた。

 「飼育」は戦時中、敵の飛行機が村に墜落し、脱出して捕らえられた「黒人兵」と、主人公の村の子どもらとの交流や悲劇を描いた内容。メモでは小説について「親和力の漲る空間」「聴覚 視覚 触覚を総合したメタファ」などと記載している。

 中上の長女で作家の中上紀さん(52)は「まさかメモが挟まれていたとは。父の筆跡を見て感動した」と話した。

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