「死ぬ気で守った」「引いちゃいけない」大湯×塚越×高星、レース終盤の3台による至高のバトル

 スーパーGT第2戦富士、100周のレースの92周目、結果的に3位表彰台を掛けたGT500の3台のマシンが白熱。ストレートから半周に渡って『これぞGTバトル』と言える高レベルな戦いが繰り広げられた。

 残り10周となったところで4番手を走行していた8号車ARTA MUGEN NSX-GTの大湯都史樹に、追い上げてきた17号車Astemo NSX-GTの塚越広大が急接近。2台がバトルを展開し始めたところで、さらに後方から3号車Niterra MOTUL Zの高星明誠が加わり、3台による4-5-6番手争いが勃発した。

 91周目の最終パナソニック・コーナーで8号車ARTA大湯のスリップに入った17号車Astemo塚越は、大湯がイン側を抑えに行ったことでストレートでアウト側にマシンを並べ、2台はサイド・バイ・サイドで並走。アウトから塚越が先行したが、ストレート終盤で大湯のマシンも伸びて追いつき、TGRコーナー/1コーナーでブレーキング勝負に。イン側の大湯はなんとかコースに留まるも、塚越がクロスラインを狙いイン側に入り、再び2台が並ぶ。

 そして、2コーナー立ち上がりからコカ・コーラ・コーナーに向けて2台はサイド・バイ・サイドで接触、さらに2度目の接触。それでもアクセルを緩めることなく、コカ・コーラ・コーナーへ。

 そこで2台がバトルしている背後に3号車Niterra高星が追いつく。コカ・コーラ・コーナーでイン側の大湯がブレーキングで前を奪うも、トヨペット100Rコーナーでは高星が17号車塚越をアウトがら大外刈り。さらに8号車大湯に襲いかかる。その100Rの最中、GT300マシンが3台の前に現れ、高星がGT300マシンをさらにアウトから抜くことになり、後退。

 GT300マシンをインからイン側から抜いた大湯、塚越が再び前に行き、アドバンコーナー/ヘアピンに。そのヘアピンでは8号車大湯の後ろについた17号車塚越が縁石に乗ってしまい、マシンがジャンプ。アウトに膨らんでなんとかコースに留まるも、3号車高星にポジションを奪われてしまった。

 結果的に塚越はその後、3号車高星をオーバーテイクし、8号車大湯はまさかのガス欠、そして3番手のリアライズコーポレーションADVAN ZがGT300マシンと接触して戦列を離れたことで、17号車塚越が大逆転の3位表彰台を獲得。450kmの長距離戦の終盤、今シーズン一番のGTバトルが繰り広げられた。

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︎大湯都史樹 8号車ARTA MUGEN NSX-GT 11位**
「死ぬ気で守っていました。ドライバー交代して出て行った時、3スティント目ですが、もともと持ち込みのタイヤを外していて、そのタイヤを使わなければいけなかったので、ずっと辛かったです(苦笑)。一番辛かったのはピックアップで、永遠に付いている感じで、どうにもなりませんでした」

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︎塚越広大 17号車Astemo NSX-GT 3位**
「クルマ的には乗っていて影響はなかったので、よかったです。僕に代わって、最初の何周かはちょっと苦戦していたのですけど、周回を重ねるにつれてクルマのフィーリングは良くなっていきました。前半、そして第2スティントも引っ張った作戦も活きたと思います。本当にチーム力であそこのポジションまで持っていけたのはすごくよかったですね」

「僕もバトルで熱くなりすぎた部分があって、大人なバトルというよりは『引いちゃいけない』という気持ちがあって、結果的にも後ろから3号車にも絡まれて、それもわかっていましたけど、あの場面場面でいったら、やっぱり引けない。でも全然、頑張る場面ではなかったのかもしれないので、そこは反省点ではありますし、そこはまた自分の糧にしたいなと思います」

「(100Rでバトル中、目の前にGT300マシン)危ないとは思わなかったですし、僕には影響はなかったです。ただ、その後のヘアピンでちょっと、自分としてはライン取りを失敗してしまった。自分の中ではとにかく8号車を抜かなきゃと思っている中で、いろいろ考えていた中でのライン取りで、ちょっとインを攻めすぎて、高いカマボコ縁石で跳ねてしまいました。クルマとか体への衝撃は大丈夫でした。あれで順位を落としてしまったのですけど、気持ちよく走れるクルマを用意してもらったので、久々に『元気な塚越』を見せられる走りができて(苦笑)、よかったと思います」

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︎高星明誠 3号車Niterra MOTUL Z 5位**
「正直、あの時点(92周目)では僕のタイヤはタレ(性能劣化)ていて、ペース的には厳しいというのはありました。なんとかその混乱を抜けてポジションを上げたいという気持ちはあったので、前に出れるなら出たいとは思っていました。100Rで前にGT300のマシンもいたことでそれはできなかったのですけど、そこはもちろん、彼らもレースをしているわけではないですし、運が悪かったなと思っています」

「シーズンを考えると5位というポジションは悪くないと思っていますけど、狙っていたのはもっと上ですし、ポイントはできるだけ多く取りたいと思っていたので、後ろから来た2台に競り負けてしまったというのは、すごく悔しいです。その反省点も踏まえて、次の鈴鹿はタイヤの選択やレース戦略、そしてドライビングをアジャストしていきたいですね」

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