<社説>新型コロナ5類移行 対策検証し、次へ備えを

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが、8日から季節性インフルエンザと同じ5類に移行する。2020年1月に国内初の感染者を確認してから3年余。新型コロナ対策は大きく転換するが、ウイルスは根絶されたわけではなく、引き続き感染拡大への警戒が必要だ。 5類への移行により、毎日の全感染者数の発表は、定点医療機関の報告に基づく週1回の発表となり、医療費は一部で自己負担が発生する。外出自粛要請やイベントなどの制限もなくなる。マスク着用は3月から個人の判断に委ねられている。法に基づき行政がさまざまな要請や関与をする仕組みから、個人の選択を尊重した自主的な取り組みを基本とした考え方に変わる。

 厚生労働省は移行後の医療提供体制について、全国の約8400施設の医療機関で入院に対応し、最大5万8千人分の受け入れ体制を確保する見通しを公表した。沖縄県も重点医療機関27カ所で最大458床を確保する移行計画を策定した。

 一方で、厚労省に新型コロナ対策を助言してきた専門家ら有志は、今後、流行の「第9波」が起こり「第8波より大きな規模になる可能性も残されている」との見解を示している。

 新型コロナが5類に移行しても、基本的な感染対策は重要だ。高齢者や基礎疾患がある人たちへの対応が、おろそかになってはならない。政府には感染動向を迅速に把握する仕組みや、感染急拡大に対応できる医療体制の構築が求められる。後遺症に苦しむ人へのケアも引き続き重要だ。

 日本では2020年4月16日に安倍晋三首相(当時)が全国に緊急事態を宣言。その後も発令と解除が繰り返され、まん延防止等重点措置も各地に適用された。その間、行動制限や営業時間短縮で経済は縮小し、学校も一斉休校などの対応に追われた。新型コロナが社会生活に与えた影響は計り知れない。

 この間の政府の対応は適切だったのか。病床確保は常に課題となり、検査体制構築や水際対策の遅れも指摘された。「アベノマスク」と呼ばれた布製マスクの配布、ワクチン供給契約など会計検査院が指摘した問題点もある。それぞれの対策を検証、分析し、感染再拡大などへの対応につなげることが重要だ。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルス感染症を巡る緊急事態宣言の終了を発表した。テドロス氏は「新型コロナが世界的な保健上の脅威ではなくなったことを意味するわけではない」と引き続き警戒を呼びかけている。

 この3年間は新型コロナウイルスなど世界規模の感染症に人類がどのように向き合っていくのかが問われた。今後、未知の感染症が発生した場合に各国が協調して対策を講じるためにも、この3年間の経験を忘れてはならない。

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