稀代の投資家、ピーター・リンチ氏から学ぶ【銘柄】の選び方

ゴールデンウィークの5連休に入る前日、5月2日(火)の日経平均株価は一時29,728円を付け、終値は29,157円でした。その日から3週間前の4月11日(火)は終値が27,923円でした。この期間で日経平均株価は、1,234円値上がりした事になります。

一般的に、25日騰落レシオは120%を上回れば「買われすぎ」、140〜150%あたりでピークを打つとされていますが、4月25日(火)~5月2日(火)まで11日間連続で120%超えています。4月25日(火)には146%をマークし、高値への警戒感が強まる水準をキープしています。

このような状況になると、どの銘柄の株価を見ても「高すぎる」と感じてしまい株を買えない方も多いのではないでしょうか。株の基本は「安い時に買い、高い時に売れ」ですから、こんな状況のときにはのんびりと銘柄探しをするのがおすすめです。

「日常生活こそ成長株探しの最大の情報源だ」という名言があります。これはアメリカの有名な投資家であるピーター・リンチ氏の言葉です。気候も心地よいこの時期には、普段の買い物などを少しのんびり気味にして、街中や店内をウォッチングするのもいいかもしれません。

今回はリンチ氏の名言を借りて、いくつかのお話しをしてみます。


ピーター・リンチ氏とは

ピーター・リンチ氏は1977年から1990年の13年間に、平均29.2%の年間リターンを達成しました。またS&P 500株価指数を一貫して2倍以上のアウトパフォームを達成し、フィデリティ・インベスメンツのファンドマネージャーとして、マゼラン・ファンドを世界最高の投資信託ファンドに押し上げた人物です。

まずは「日常生活こそ成長株探しの最大の情報源だ」という名言ですが、この言葉は私が証券会社に入社した当初、上司から何度も聞かされた教えでもあります。上司は「外出の際は常に行列を探したり、混雑している店や売れている物をリサーチすること、株とは元来そういうものです」と、入社間もない私や同僚に言っていました。いま思えば正にリンチ氏と同じ考えです。

何も考えずひたすら目的地まで歩くのと、行列や混雑する店、流行っている「何か」を探しながら歩くのでは全く結果が違います。少し前まで混み合っていた店にほとんど人が居なくなったときには、流行の終わりなのか、類似する他のものに移行したのかなど、自分なりに考えたりすると、思わぬヒントに出くわしたりもします。

「どんな株を買ったら良いのか」への一つの答え

もう一つ、「その会社の人間が自社株を買っているのは、その会社がうまくいっている何よりの証拠である」という名言もあります。

以前、知り合いの方から「どんな株を買ったら良いのか分からない」と相談をされました。「銘柄を細かく調べているうちに分からなくなってしまう」と言っていました。私は「いま携わっているお仕事は楽しいですか?」と質問してみました。「楽しいかどうかは別にして、とてもやり甲斐があり、社内の活気は以前より上がっています」という答えでした。「それならば貴方が働いている会社の株を買ってみたらどうでしょうか」とお伝えしました。

自社の株を買うなんて一切考えていなかったらしく、この提案に相談者は最初驚いていましたが、確かにここ最近社内の雰囲気が一変していることを肌で感じ、風向きが良くなっているのかもしれないと考えたようでした。しばらくして「たけぞうさんにアドバイスして頂いたとおり、少しだけ自社株を買いました」と連絡がありました。

その後、無事その会社の株価は上昇しました。【灯台もと暗し】とも言うべきエピソードでした。日々社内の状況をよく見渡せる自社が投資先になる事は、とても理想的だと思います。このように、自社株を購入する選択肢もあると覚えておくといいかもしれません。


丹念な予測や期待を込めて選んだ銘柄でも、時に大損してしまうこともあります。ガッカリする気持ちは何度となく味わいましたし、個人投資家となった今でも日常茶飯事です。

そんな時に思い出すのは、リンチ氏の「自分の選んだ全ての株で儲ける必要はない。株式投資で成功するために必要なのは、大幅に値上がりする幾つかの銘柄であり、それらによるプラスは期待外れの株の損失を埋めて余りある」という言葉です。

真摯に相場に向き合っているからこそ出る名言だと思います。リンチ氏の言葉には、投資家同士だからこそ心に浸透する優しさや励ましのような底力が宿っています。

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