きょうから「5類」

 数年前、冬になるとマスク姿の若い人たちをよく見かけた。街頭インタビューで「なぜ?」と聞かれて「顔の下半分を隠せるから」と学生が答えたのを覚えている▲自分をさらけ出すのが苦手な世相の表れかな、と勘繰ったものだが、その後のコロナ禍で国民は皆、マスク姿になる。今年に入り、政府は着用を「屋内外を問わず個人の判断で」としたが、それを不安に思う人も多かったろう▲新型コロナは感染症法上、きょうから「5類」になる。マスクに限らず、行政が法に基づき、外出自粛といった要請や関与をする形ではなく「個人の選択」が重んじられる▲「空気を読む」「周りに合わせる」という、日本でとりわけ強いとされる風潮も、コロナに関しては緩むのかどうか。コロナのさなか、世間の空気に同調するよう圧力を加えた行動の数々を、今も忘れられずにいる▲感染者が電車で移動すればネットで暴かれ、難じられる。小さな商店は近隣から監視され「シメロ(閉めろ)」と、ののしる張り紙をされる…▲挙げれば切りがない「自粛警察」の数々は「マスクで顔の半分を隠す」どころではない。ほぼ全てが匿名で、いわば顔を仮面で覆い隠し、激烈な言葉を浴びせかけた。「5類」にひと安心する一方で、心の“仮面着用”の行く末はどうも見通せない。(徹)

© 株式会社長崎新聞社