茨城・笠間焼250年の変遷  協組が記念冊子 豊富な写真、代表作家紹介

「笠間焼 250年のあゆみ」を手にする大津廣司理事長=笠間市笠間

茨城県の笠間焼が誕生して250年になるのを記念して、笠間焼協同組合は、草創期から現代に至る変遷を記した冊子「笠間焼 250年のあゆみ」を刊行した。江戸中期に焼き物生産を通じて地域の産業発展に尽くした窯元や陶工、戦後の衰退期を乗り越えた官民一体の取り組み、独自の陶芸表現を展開する現代作家などを詳しく紹介した。ほかに笠間焼海外販路開拓事業など近年の動きや、携わる人々の息吹を伝えている。

本書は、県立歴史館特別展「笠間焼 200年のあゆみ」(1997年開催)の展示解説書をベースに、生産の仕組み、土づくりから形成・焼成に至る制作技法や用具の変遷、商品流通の在り方などを柱に構成している。

特徴の一つが豊富な写真資料。県陶芸美術館や県立笠間陶芸大学校の協力を得て、笠間焼の元祖とも言える江戸・明治期に製造されたかめや、すり鉢など生活雑器の写真を掲載している。奇をてらわない素朴な造形だったり、大胆な釉薬(ゆうやく)がけがなされ、焼き物が暮らしに根付いていた往時をしのぶことができる。

現在の笠間焼を代表する作家145人の作品写真も紹介している。「伝統」「創作」「クラフト」「前衛」といった日本工芸の大勢に呼応するような、型にはまらない多彩な陶芸表現を一覧することができる。

このほか、産業としての笠間焼に関する近年の動きも記載。英国を拠点とした海外販路開拓事業や、同市内で採掘される稲田石の微粉末を釉薬原料に活用する試みなど、未来に向けて持続・発展させようとする人々の知恵や情熱を伝えている。

同組合の大津廣司理事長(75)は「250年という歴史は先人たちのご努力のたまもの。多くの功績に感謝と敬意を表したい。本書の出版は、50年先、100年先の笠間焼の方向性を考える機会にもなった。多くの方に手に取ってもらえれば」と話した。

「笠間焼 250年のあゆみ」は笠間市内の図書館など公共施設に配布。問い合わせは、同組合(電)0296(73)0058。

★笠間焼
江戸安永年間(1772~81年)に箱田村(現笠間市箱田)の久野半右衛門が近江国(滋賀県)信楽出身の陶工の指導を受け、窯を開いたのが起源とさる。かめや、すり鉢などを焼き、幕末に笠間藩は六つの窯元を御用窯として支援。これらを美濃(岐阜県)出身の陶器商・田中友三郎が本格的に売り出した。明治から昭和にかけて生活雑器を中心に生産して繁栄したが、戦後、プラスチック製品の普及などにより業界は大きな打撃を受けた。その後、県窯業指導所(現県立笠間陶芸大学校)の設立、窯業団地の造成、販路拡大などに官民一体で取り組み、生活雑器から工芸陶器へと転換を図った。現在は創作活動をする作家を含め約300人の陶芸家や窯元がおり、海外販売にも力を入れている。

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