南極に一冬滞在、温暖化研究へ試料1トン採集 弘前大・梶田助教参加の研究チーム

ミルフィーユのように何層にも重なった南極の氷(梶田さん提供)
氷河をバックに、氷河によって運ばれて氷河が解けた後に置き去りにされた「迷子石」の上にまたがる梶田さん(梶田さん提供)

 弘前大学理工学研究科助教の梶田展人(ひろと)さん(29)=青森県弘前市=が、第64次南極地域観測隊の一員として、昨年11月から今年3月まで南極に滞在した。今より暖かかった時代の地球で南極の氷がどのように解けたかなどを調べる「重点研究」のチームに加わり、湖の底の土や石、水などを集めてきた。これらのサンプルから、南極の氷の解け方の仕組みを解き明かし、温暖化が進むこれからの地球の未来予測に役立てる。梶田さんは「地球規模の研究に、もっとたくさんの人が興味を持つきっかけになれば」と話している。

 梶田さんは茨城県育ち。北海道大学理学部、東京大学大気海洋研究所を修了後、国立極地研究所(極地研)で任期付きの研究員となり、昨年5月に弘大に着任した。南極行きは極地研時代に志願。先輩研究員で、新たな地質年代「チバニアン」の研究などでも知られる極地研の菅沼悠介さんが代表を務めるチームに参加した。

 チームは氷が張る湖で調査するため、南極に夏が来て氷が解けてしまう前に、ほかの隊員より一足早く出発。南半球の春に当たる10月上旬、先遣隊として飛行機で南極に向かった。

 南アフリカを経由して南極に入り、前半の約1カ月は昭和基地を拠点に、周辺の湖などで調査。基地での暮らしは「インターネットが遅いくらいで、ほとんど日本と変わらなかった」。ラーメンやすし、焼き肉なども食べることができたという。

 その後は、基地から20キロほど離れた地点で調査するため「札幌の冬と同じくらい」という気温の中、野外キャンプで40泊した。帰りは氷を砕きながら進む観測船「しらせ」に乗り、海のプランクトンなどを調査しながら約1カ月半かけて日本に戻った。期間中にチームが集めた石や水などのサンプルは約1トンに上り、これから数年、数十年かけて内容を分析する。

 梶田さんは「日本は災害が多くそちらに注目が集まりやすいためか、地球規模の長期的な環境変動を調べるような研究への関心が薄い。こういう機会にもっと興味を持ってもらえたら」と話した。

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