SPOOL「(image for) drawing on canvas」- 透明な世界が段々色づいていくような、体温を取り戻していくようなストーリー性

グランジ、シューゲイザー、インディーポップなどを踏襲したサウンドと低体温なボーカルが生み出すクールな世界観が魅力的な女性4人組オルタナバンドの3rdアルバム。怖いくらいの透明感と温もりのあるアンティークな質感との対比を映像的に描いた前作『cyan / amber』の内的世界に比べて、扉を開いて外へ飛び出していくようなPOPさと光量が圧倒的に増した。 ライブ感のあるインスト曲「fu_ka_n」、出口の見えないループでもがく「ハロー・マイ・ロンリー」、メランコリーを抱えながらも光に向かって昇っていく美しく壮大な「さめない」、サーフミュージックの爽快さと遊びの効いた「P-90」の抜け感など、これまでの彼女たちのクールさは継承しながらも、曲調の幅が広がったことで透明な世界が段々色づいていくような、体温を取り戻していくようなストーリー性のある温かい作品に仕上がっている。着々と進化を遂げる彼女たちに期待大。(小野妙子 / LOFT9 Shibuya)

© 有限会社ルーフトップ