新型コロナ きょうから「5類」に移行 何が変わる?何をすべき?

 本日2023年5月8日より、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行した。政府の対策本部は解散し、感染症法に基づいて対策本部が出していた、隔離などの強い措置を可能とする「基本的対処方針」も廃止されたため、マスク着用をはじめ、感染対策は基本的に個人の判断となる。「5類」移行でこれまでと何が変わるのかをまとめた。

「5類」=季節性インフルエンザと同じ扱いに

 感染法上「5類」に指定されるのは、基本的に季節性インフルエンザなど、比較的致死率が低いとされ特効薬も開発されている感染症。新型コロナウイルスはまだ「特効薬」は開発されていないが、致死率低下などの経緯を評価し、特別な対策は必要なしとみて移行を決めた経緯がある。つまり今日からは、基本的には既知の感染症と同じ対策、体制でのぞむということとなる。わかりやすく言えばインフルエンザと同じと考えていいのだが、特効薬がない、また治療薬はあっても高価である事情を考慮して多少の運用の違いが生じている。

1.検査・診断はどう受ける?

「5類」となって大きく変更となるのが検査と診断をどこで受けるかということだ。これまでは保健所が大きく関わり、場合によっては一度も診療所に行くことを許されない状況があった。これは感染拡大を防ぐため、気圧処理や動線の分離など、対策を整えている設備を持つ医療機関でしか診療できない扱いだったからだ。本日からはこの制限がなくなり、基本的には全国どこの医療機関でも診療を受けることが可能となる。

 しかし現実として、医療機関を行くまで自身の状態について何も言わず、診察室に入ってから初めて発熱の症状がある、インフルエンザかコロナかもと言うのは、その医療機関だけでなく同じ時間に受診している他の患者にも大きな迷惑をかけるので自重すべきだろう。薬局やドラッグストア等で、政府の認証を受けている簡易検査キットが配られているので、それを活用し、受診する前に検査を受け連絡するのが望ましい。医療機関側も事前に分かっていればスムーズな案内、処方薬の手配などが可能になるからだ。なお検査キットは5類移行により有料となる。

 またどこの医療機関でも受診できるからといって、自身のかかりつけ医が対応してくれるとも限らない。厚生労働省は医療機関に対しては、設備や体制が整っていない場合は、近隣の「発熱外来」を紹介しても構わないという通知を出している。つまり事実上は医療機関の判断で引き続き受診を拒否できる状況なのは変わらないので、近隣の医療機関が積極的に「新型コロナもOK」と言っていない限りは、発熱外来を探して受診する方がスマートということだ。

2.感染判明して療養する場合は?

 「5類」になってもっとも変わるのは診断後の療養についてだろう。これまでは一定期間の隔離、外出禁止、保健所に対し健康状態の報告などが課されていたが、今日からは一切なくなる。一定の目安が出されてはいるが(1週間を目安に自宅療養など)、それも季節性インフルエンザと同じで義務ではない。感染しても外出は可能だし、人が集まる場に行っても政府や自治体から非難されるいわれはなくなるということだ。しかしすべて自己責任なので、大切な人にうつしたくない場合は、他人との接触を避け自宅療養するのがベターだろう。会社勤めの人ならインフルエンザと報告したら一定期間出勤禁止になるのが当たり前だが、扱いは同じだと考えた方が分かりやすいだろう。

 なお季節性インフルエンザのときにもよく話題に上るのが、出勤停止や子どもの来園禁止解除の根拠として「治癒証明」を出せと言われて困るという医療機関の訴えだ。医学的にはどのような病気でも「治癒証明」というものは出せないし、法律的にも出す義務はない。目安となる一定期間の療養、症状がなくなっているという報告があれば通常の生活に戻ってよいので、あまりにも言われる場合は労基署や保健所に相談した方がいいだろう。

3.治療費・ワクチン接種費用は?

「5類」になるということは通常の扱いにするということであり、通常通りの医療費がかかる(通常3割負担、高齢者は1割)。ただし、ワクチンについては2024年3月まで無料、処方薬については当面の措置として9月末まで無料(保険で全額支払い)となった。これは処方薬の薬価が高いため、通常通りの3割負担にするとしても影響が大きく「診療控え」が懸念されるためだ。

 厚生労働省が出している試算によると、窓口負担が3割の人が、解熱剤とコロナの治療薬を処方された場合は、最大で4170円。同様に窓口負担1割の高齢者が同じ解熱剤と治療薬を処方された場合、最大で1390円となる。これはほぼ季節性インフルエンザと同じ費用となっている。なお入院加療となった場合も、基本的には他の病気と同じ扱いで自己負担が増えるが、高額療養費制度の自己負担限度額を2万円減額し、一定の負担軽減を図るとしている。

 受診する側としては、特効薬がないということを重要視した方がいいだろう。処方薬が無料になるとしても早期におさまる可能性が高くないのであれば、生活の質のことを考えて無料のワクチンを適度な間隔をあけて打ち、感染または重症化予防に務めるのが、実はもっともお金と時間のコストがかからない対処法となる。というのは最近の調査で、新型コロナによる症状がおさまっても、感染した人4人のうちおおよそ1人が後遺症に悩まされるという統計が出ているからだ。感染してみたら意外と重篤で時間がかかり、症状がおさまっても別の後遺症で悩まされ、しかも後遺症については自己負担となるから治療費にも悩まされる、ということになりかねないのである。ワクチンもずっと無料というわけではないから、無料のうちにできるだけ体内に抗体が残るようにした方がいいだろう。

毎日の数値発表は終了、感染状況把握が遅れる恐れ

 政府や自治体の対策、という意味で、もっとも対応が変わるのが感染状況の発表だ。季節性インフルエンザと同じ「5類」になることで、毎日の感染者数などの発表がなくなり、基本的には「後日発表」になる。具体的には、季節性インフルエンザと同様に、週1回、全国約5千の医療機関に年齢層や性別ごとの新規感染者数を報告させる「定点把握」に変更となり、その1週間ごとの集計結果を毎週金曜日に厚生労働省がホームページ上で公表する。つまり5月8日〜14日の状況が、5月19日に発表されることになる。以後も同様で、簡単に言えば、常に1週前の状況しか分からないということになる。

 これについては専門家からも感染状況把握の遅れにつながるとの指摘が出ており、その懸念に対処するため、献血者の血液検査による抗体保有率の動向調査、また下水中のウイルス検査を続けることとしている。また重症者、入院患者に関する一定の定期的な報告について検討するという。

 「死者数」についてはさらに把握が遅れる見通しだ。感染者数の把握自体が遅れることから、今後は現在の枠組みである「人口動態統計」をもとに推移を把握していくことになる。「人口動態統計」は、死亡届や死亡診断書から死因などのデータを集計して死亡者数の動向を把握するもので、もともと感染症のためだけの枠組みではないためどうしても統計作業が遅れてしまう。具体的には、死者の総数把握は2ヵ月後、死因の原因分析がなされた詳細な発表は5ヵ月後になる。

 こちらの方針についても、専門家から感染状況把握の遅れにつながると懸念が示され、一部の自治体の協力を得てサンプル調査として1ヵ月以内の死者数の増減発表ができるよう調整しているという。

「日常」へ戻る対応はまさにこれから

 これまで政府や自治体の感染対策の変更についてみてきたが、職場や飲食店など、一般の対応については「基本的対処方針」自体が廃止となっておりすべて自己責任の対応だ。アクリル板や換気強化、ソーシャルディスタンスについてなども同様で、特に「する必要なし」とも示されていないため個々の対応に任されることになる。日々の感染者発表など状況把握ができなくなる状況は、個々の対処を決める指標がなくなるということでもあるため、今後飲食店の席数を元に戻す、消毒液の設置の有無などで軋れきを生む可能性もある。その意味で、本当の「日常への回帰」は、毎日の感染者発表がなくなったなかで、再度の流行が生じたときにどのように適切な対処を行えるか、ということにかかっているのではないだろうか。そこには、私たち一人一人が、「5類」になったのだから何もしなくてよいのだと誤解することなく、手洗いうがい、体調に不安を感じた時などにマスクをするなどの基本的な対策を続けることも含まれるだろう。

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