日本動産鑑定、「ABLの発展型である事業成長担保権」に期待

4月20日、(特定)日本動産鑑定(TSR企業コード:297425994)は「賛助会員の集い」を開催した。金融機関や官公庁の関係者など約150名が参加した。
日本動産鑑定・久保田清理事長と同鑑定顧問で昭和女子大名誉理事の平尾光司氏が挨拶し、官公庁の担当者が取り組みを講演した。


経済産業省の山井翔平課長補佐(経済産業政策局 産業資金課)は、ABL(動産担保融資)の現状と取り組みの方向性について講演した。従来の経営者保証が事業再生を阻害している可能性を指摘し、代替となる融資手法としてのABLの位置付けを説明。一方、ABL推進の課題として評価基準の不明確さを取り上げ、適切な事業性評価のためのローカルベンチマークの重要性を解説した。中小・スタートアップ企業の資金調達手段の拡大や金融機関による伴走支援の強化など、事業成長担保権(仮称)への期待で締めくくった。
金融庁の尾﨑有参事官(企画市場局)は、事業成長担保権の法制化に向けた動きと融資実務への影響を現行制度との比較を交え解説した。経営者保証や不動産担保などで融資を利用する中小企業でも、事業性評価による融資を希望する事業者の割合が高いことも指摘。事業成長担保権が創設され、事業性や将来キャッシュフローに着目した融資が促進されることで、リスクマネーの供給拡大や金融機関による事業者支援の強化にも繋がるとした。
水産庁の中村真弥課長補佐(増殖推進部栽培養殖課)は、「養殖業産業化総合戦略」をもとに、養殖業の今後の成長目標と方針を説明。世界的な漁獲量の減少やSDGsに対する意識の高まりで、養殖業の成長産業化が求められている一方、従来の不動産担保による融資が難しい養殖業の実態に触れ、事業性評価による融資の必要性を語った。養殖業の担い手確保やマーケット・イン型養殖業の推進が課題だとして、外部評価を活用した養殖業改善計画に対する補助など、事業性評価の実践的な事例も紹介した。
東京都の中川健太朗課長代理(産業労働局金融部金融課)は、都のABLの概要と実際の運用について案内した。都では中小企業がABLを利用する際、評価費用の一部を補助し、金融機関にもABLを利用した債務者のデフォルト時に損失の一部を補填していることを説明。2023年度の取り組みとして、都のABL制度における新スキームの公募も告知した。

講演する久保田理事長

最後に登壇した日本動産鑑定・久保田理事長は、経営者保証や不動産担保に頼らず、事業の将来性・成長可能性による融資の浸透のためにもABLの発展型である事業成長担保権の創設が必要と指摘。事業性評価に基づいて設定された担保を信用不安と捉えず、成長のための前向きな融資と理解することが重要と語った。
さらに、今後重視される「人的資本」として、事業性評価のできる人材の育成を呼びかけた。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年5月1日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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