コロナ5類移行 マスク着用7割、恐る恐る新たな日常スタート 「平時」と「有事」入り組む神戸

マスクを外した人、着け続けた人。それぞれの思いが交錯した繁華街=8日午後、神戸・元町(撮影・中西幸大)

 マスクに消毒液、店の検温器、アクリル板…。新型コロナウイルス禍で見慣れていた光景は、「5類移行」でどう変わったか。「コロナ後」の新たな日常に向けて社会が恐る恐る一歩を踏み出した8日、「平時」と「有事」がまだらに入り組む街を記者が歩き、声を聞いた。

■100人中76人

 朝。神戸・三宮。通勤風景はほとんど変わらず、駅員も通勤客も多くがマスク姿だった。午前11時から三宮センター街で100人を調べると、マスク着用は76人。これまでより少し減っている。

 三宮センタープラザ内の献血ルームでは、この日から訪れる人のマスク着用を任意に。コロナ禍で協力者は減少していたといい、担当者は「感染の不安がぬぐい切れたわけではないが、少しでも献血に来てくれる人を増やしたい」。

 神戸市の中央区役所。窓口の職員は「高齢者や基礎疾患がある人らも利用するため」と引き続きマスクを着用。区役所を訪れた近くの女性(82)は「声が聞き取りにくい人にはマスクを外してほしい」と求めた。

■アクリル板なし

 昼。同市中央区のレストラン「PURAPURA(プーラプーラ)」。入り口に消毒液はあったが、テーブルにはアクリル板がなかった。酒井正裕店長(50)の口元にもマスクはなし。「ない方がコミュニケーションを取りやすい。改めて外食の楽しさを思い出して」と今後に期待した。

 平日も観光客でにぎわう神戸・元町の中華街「南京町」。高校生や家族連れが食べ歩きをしたり、写真を撮ったり。妻と旅行中という名古屋市の男性会社員(56)は「神戸では意外と多くの人がマスクを着けている印象。いつになったら周囲を気にせず外せるのかな」。

 南京町で食品や土産物を販売する「東福」は従業員のマスク着用を当面続け、飛沫防止シートや消毒液も置いたまま。男性従業員(70)は「客の中には不安を抱く人がいるかも。当分は様子見ですね」と話した。

 港を望むメリケンパークでは、マスクなしの子ども連れや外国人観光客の姿が目立つ。神戸市垂水区の主婦(26)は長男(5)らとともに訪れた。「子どもはマスク姿の大人から感情が読み取れないと感じる。これからは楽しい時も怒る時も表情を豊かに接したい」

■6回目接種もスタート

 医療機関では、コロナ検査などが自己負担に。同市長田区の「くじめ内科」は午前中の発熱外来で2人を診察した。久次米健市院長(74)が患者に自己負担を説明すると、1人は「高くなるなら薬だけでいい」と検査せずに帰ったという。「コロナと分からなければ自宅待機を強くお願いできない。インフルエンザとの同時流行時は適切な治療につなげられなくなる」と心配した。

 新型コロナワクチンの6回目接種もスタート。高齢者や基礎疾患がある人などが対象で、加古川市のイオン加古川店内に設けられた同市の集団接種会場には8日だけで約300人が予約した。同市の男性(82)は「制度上5類になっただけで、ウイルス自体は怖い。人と会う機会があり、感染したくない」と接種に臨んだ。(名倉あかり、竜門和諒、勝浦美香、宮崎真彦)

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