哀愁を帯びた一輪の花《可愛かずみ》女優はもとより歌やバラエティなどマルチに活躍!  合掌 5月9日は可愛かずみの命日です(1997年没・享年32)

80年代アイドル総選挙でもランクインした可愛かずみ

去年末から今年にかけて行われた『80年代アイドル総選挙!ザ・ベスト100』で可愛かずみがどの位置にランクインするのかというのも、個人的にはひとつの大きなポイントだった。すると76位にランクイン。彼女の存在が風化されることなく、今も多くのファンの心の中で生き続けていることは素直に嬉しかった。

可愛かずみの存在はデビュー事情が特異であったため、アイドルクロニクルの中で語ることがなかなか難しい部分もあったと思うが、ここを語らずして80年代アイドル黄金期の後世に伝えるべき地図は確立しないと思う。

可愛の存在が大きく認知されたのは『オレたちひょうきん族』のワンコーナー「ひょうきんベストテン」で中森明菜のモノマネをして出演していた頃だろうか。その後は、深夜バラエティ番組『トゥナイト』のアシスタントや、深夜ドラマ『トライアングル・ブルー』でのとんねるずとの共演などで名バイプレイヤーぶりを発揮。テレビ界においてはなくてはならない存在に成長する。

「ヘッドフォン・ララバイ」でシブがき隊と共演

可愛のデビューはにっかつロマンポルノ『セーラー服色情飼育』(1982年)だった。今ではコンプライアンスに触れそうな過激なタイトルだが、彼女に激しい濡れ場はなかった。しかし、一般映画に出演、同時にテレビ出演も増えていき、タレントとして本格的に舵を切った後もセクシー路線の印象ばかりが先行してしまったのも確かなことだった。これは。本人にとって、プラスでもあり、マイナスでもあったと思う。

つまり、巨乳にアンバランスな童顔というルックスから多くのファンを獲得するが、その後の順風満帆の活躍ぶりの中でもしばらくはデビュー当時のイメージが根強く残った。女優はもとより、歌にバラエティにとマルチに活躍できる実力と大きく乖離し、正統的な評価が得られなかったのだ。

ロマンポルノといえば、どこかアンダーグラウンドの印象を拭えないが、当時の話題性は相当なもので、ここを出自としてステップアップする女優も多かった。

“ロマンポルノ界の聖子ちゃん” と言われ、ファンクラブもあった寺島まゆみや、今や日本映画に欠くことのできない女優のひとりで、山田洋次監督作品『男はつらいよ』のレギュラー出演者でもあった美保純など数々のスターが生まれた。

当初は彼女たちに続くイメージだった可愛だが、ロマンポルノ出演は本作1本のみで翌年には映画『ヘッドフォン・ララバイ』でシブがき隊との共演を果たす。さらに翌年には『春感ムスメ』で念願のレコードデビューを果たす。

哀愁を帯びたデビュー曲「春感ムスメ」

今となっては、テレビ、バラエティの印象が強い可愛だが、歌手としての実力も相当なもので、デビュー曲「春感ムスメ」の他にも「TOKYOふられ小町」、「仔猫の決心」、「星屑のシネマ」という4枚のシングルを85年までにリリースしている。

ちなみにこの「春感ムスメ」は70年代的な哀愁を帯びながらも当時流行していたテクノ歌謡の要素も垣間見られる不思議な余韻を感じる1曲である。そしてこの4曲に共通するのは、ズバリ “哀愁” だ。

全てがどこか陰りのある美少女という可愛のルックスにも合致するし、決してメインストリームではないのだが、路地裏にひっそりと咲く一輪の花を見つけて欲しいと願う、デビュー当時の可愛の願いを代弁しているかのような楽曲が続いた。

可愛の持つ哀愁を帯びた一輪の花のような印象は、MCのアシスタントやドラマでも脇役など、誰かの力添えになることで、その魅力はより一層多くの人に伝わるようになった。そして彼女は80年代、90年代を駆け抜けた。

今年で没後26年となるが、そんな可愛のイメージを多くの人が忘れずに心の片隅に忍ばせている。確かに可愛かずみの存在は、当時のテレビ界になくてはならないものだったのだ。

カタリベ: 本田隆

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