コロナで妻亡くし自身も生死さまよう 85歳男性「残り少ない人生を地域のために」 筋トレで体力回復、近所の草刈りなど再開 

敏子さんの遺影を持ち、コロナ感染時を振り返る藤原尚己さん。現在も酸素療法を続ける=小野市

 新型コロナウイルスが5類に移行した8日、2年前に感染後、生死をさまよったが回復し、酸素療法を続ける兵庫県小野市の藤原尚己さん(85)は複雑な気持ちでいる。先に感染した妻敏子さんを亡くした後、自身も陽性と判明。北播磨総合医療センター(同市市場町)に入退院した後、筋力トレーニングで体力を取り戻した。「残り少ない人生を地域のために」と、草刈りなどの活動に励む。(坂本 勝)

 藤原さんは2021年5月、コロナに感染した。家族の陽性が分かった後、79歳だった敏子さんも感染し、同年5月9日、救急車内で亡くなった。敏子さんには心不全の基礎疾患があり、ペースメーカーを付けていた。葬儀もできないまま、藤原さんが一人で骨上げをしたという。

 同センター駐車場のテントで検査を受け、藤原さんも感染が判明した。病室に入ってからは歩いてトイレに行けなくなり、ベッドに戻って意識がなくなった。40日間、入院していた。

 体重は20キロ減った。「痩せた分の筋肉はどこへいくんやろ」と看護師に尋ねたほどだった。新型コロナのデルタ株で大勢が亡くなっていた頃で心配が募った。

 退院してから後遺症を克服しようと、コロナ関係の新聞記事や雑誌を次々と読んだ。同県加東市下滝野のトレーニングジム「雷神ファクトリー」の笹倉伯文代表も訪ね、肺に負担がかからないように筋肉をつける大切さを教わった。

 退院後は5キロのダンベル2個を上げ下げして鍛えた。やがて体力が戻り、近所の草刈りや街路樹の枝切りを再開できるようになった。

 敏子さんも地元の婦人会長や民生委員を務めるなど社会奉仕をしていた。三回忌を終えたが、コロナでなく、穏やかな最期をみとってあげたかったと悔やむ。

 藤原さんは「入院中は死を覚悟した」と振り返り、「後遺症に悩んでいる人は多いはず。生き残った分も地域に貢献したい」と話す。

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