コロンビア人アーティストが表現する日本 古来より伝わる伝統や民話を作品に

伝統的な日本の行事、ひな祭りを題材にしていながらも、どこか不思議でホラーな雰囲気。鎮座するお内裏様の顔には大きな目が一つ、そしてお雛様の方は目が5つも付いています。そして両脇には人間の手足が付いた不思議な植物と…さまざまな要素がミックスされた、シュールでファンタジーな作品です。
この作品を制作したのは、コロンビア出身のアーティスト、テレサ・クレアさん。切り絵をベースにさまざまな素材や技法を用いて作品を制作しています。
日本に住む外国人アーティストが作り出す、不思議な世界。今回は、作者のテレサ・クレアさんに、日本の民話や伝承を題材にした作品制作についてインタビューしました。

―これまでの経歴を教えてください。
コロンビアのボゴタ出身で、2008年にボゴタの美術大学を卒業し、それからアーティストとして活動を始めました。シュールレアリスムの運動に影響を受けていて、想像や虚構の世界、言葉で表現できない世界を作品にしたいと思っています。

―いつから日本の伝統行事や民話に興味を持つように?
3年ほど前から、日本に限らず世界の妖怪やモンスターに興味を持って調査していたんです。そのなかで日本の伝統的な妖怪というものを知って、2020年に日本を訪れました。古いものを新しい形で表現するということにチャレンジしたくて、日本の妖怪や伝承について調べたり、自分のオリジナルの妖怪を作ったりしていました。そのうちにコロナウイルスがまん延し、帰国できなくなったので日本で勉強を続けることにしたんです。日本のパワースポットや神社などをめぐって写真を撮ったり研究したりしていました。

―クレアさんが思う妖怪の魅力は?
元々想像上の生きものを研究していたこともあって、日本の妖怪にも興味を持ちました。妖怪ってどれも、それぞれのストーリーがありますよね。こういう場所にいる、こういうときに現れる、こういう性格でこういうことをする、というような。日本の人の多くがそのストーリーを知っていて、それを話せるというのが魅力だと思います。子どもたちに何かを話すときに妖怪というものを引き合いに出したり、何か起こった出来事を妖怪と結び付けたりするのもおもしろいですね。

―日本での活動について教えてください
突然誰も予想できなかったコロナという事態が起きて、日本に長期滞在することになりました。就労ビザがなかったので正式に働くこともできませんでしたが、同じアーティスト仲間などたくさんのすばらしい人々に出会えて、支えられてきました。日本人の夫と知り合って結婚もしました。また一方で、コロンビアのギャラリーも私の作品を販売して支援してくれるなど、本当にいろんな人にサポートしてもらいました。

―これからの活動の目標は?
今は群馬で、妖怪や伝承とはまた違った別のプロジェクトに取り掛かっています。今年の目標としては、展覧会を開催してみんなに私の作品を見てほしいと思っています。人に見せるというのは大切なアーティスト活動の一つ。見てもらってフィードバックをもらって、いろんな交流ができたらと思っています。私の作品に興味を持ってくれる方々に、感謝の気持ちでいっぱいです。インスタグラムなどのSNSにも作品の写真をたくさん載せているのでぜひ見てみてください。

© 株式会社ゼネラルリンク