袴田さん弁護団「裁判所が全証拠に目を」意見書提出へ 絞り込みは都合悪い証拠伏せる恐れが

再審=裁判のやり直しが確定した袴田巌さんのやり直し裁判をめぐり、弁護団は5月9日、裁判所が求める証拠の絞り込みについて「その必要はなく、裁判所が一度、すべての証拠に目を通すべき」と訴える意見書を提出する方針を決めました。

いまから57年前、旧清水市で一家4人を殺害したとして袴田巖さんの死刑が確定したいわゆる「袴田事件」。袴田さんに死刑判決を下した証拠は、古い上に膨大な量です。

4月10日に開かれた三者協議で、静岡地裁は検察、弁護側の双方にそれぞれの主張に必要な証拠を厳選するよう求めましたが、弁護団は膨大な量の証拠の絞り込みに苦慮していました。

「弁護団会議を始めます」

そして、9日開かれた弁護団会議。裁判所が求める証拠の絞り込みについて「その必要はなく、裁判所が一度、すべての証拠に目を通すべき」と訴える意見書を10日、静岡地裁に提出する方針を決めました。

<袴田事件弁護団 角替清美弁護士>

「いまさらその証拠を厳選することは、ねつ造の実態なんかもみえなくさせてしまうことがある。裁判所はきちんと全部の証拠を取り調べて、その上でこちらがそれに基づいて主張をしていけばいい。証拠の厳選には同意しないと」

2023年3月に袴田さんの再審=裁判のやり直しを決めた東京高裁は、袴田さんを犯人とする決定的な証拠とされてきた「5点の衣類」について捜査機関によってねつ造された疑いがあるとまで言及。弁護団は「裁判所が求める証拠の絞り込みは、検察にとって都合の悪い証拠を伏せさせてしまう恐れもある」と9日の判断に至った理由を説明しました。

死刑事件で再審が始まるのは袴田さんで5例目。過去4件はいずれも無罪判決が言い渡されています。一方で検察は袴田さんの有罪立証を改めて行うか方針を決めるのに「7月まで猶予が欲しい」としています。弁護団は、検察が迅速に方針を決めるよう裁判所の指揮を求める意見書も近く提出する方針です。

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