「雄獅少年/ライオン少年」花江夏樹 インタビュー

「チュンがライオンのマネをするシーンは、やっていて楽しかったです(笑)」

2021年12月に中国で公開され、興行収入2.49億元(約50億円)、動員638万人という大ヒットを記録した映画「雄獅少年/ライオン少年」。大迫力の獅子舞バトルをCGアニメーションで描いたアクション・エンターテインメントだ。その日本語吹替版が5月26日に公開される。獅子舞を通し、大きく成長していく主人公の少年・チュンの吹き替えを担当するのは、「鬼滅の刃」の竈門炭治郎役をはじめ、繊細な演技で高く評価されている花江夏樹だ。

――チュンはどんな少年でしょうか?

「チュンは、見た目はすごくひょろひょろしているんですけど、自分の中に一本心(しん)が通っている少年。獅子舞を始めるのも、都会で開かれる獅子舞の大会に出て、その姿を出稼ぎに行っている両親に見てほしいから。両親を安心させたいんですよね。チュンの獅子舞に対する思いと家族に対する思いはずっとブレないし、心(しん)がどんどん太くなっていって、カッコいいです」

――そんなチュンが出合う獅子舞競技は、日本ではなじみが薄いですが…。

「我々日本人にとって、獅子舞はどこか地味なイメージがあって、『映像になって面白いの?』と思うかもしれませんが…。CGアニメーションで描かれる獅子舞の動きは躍動感があってカッコいいんです。獅子舞のアクションは、“実際にこの動きができるのかな。でも、できそう”という、リアルと“アニメらしい”ラインのギリギリを攻めたもの。そこも魅力的ですね。しかも、チュンたちは練習して練習して、どんどん成長していきます。練習シーンもしっかりと描かれているので、“頑張れ”と応援したくなるんです」

――今回は中国語の吹き替えですが、難しさはありましたか?

「映像では中国語に合わせて口が動いているので、声をはめるのが難しいと感じるところはありました。その上、表情がけっこうパキパキ切り替わるんです。そこに上手くあてるのも大変でした。元の役者さんの演技はしっかりと聞いて、年齢感や、どういうお芝居をしていらっしゃるのかを参考にさせていただきました。ただ、あまり引っ張られ過ぎないようにはしていましたね」

――特に難しかった部分は?

「やっぱり長ぜりふがあるシーンですね。ずっとしゃべっているので難しいですよね。あとは、獅子舞の最中。獅子頭をかぶっていて顔が見えない上、動きがすごく速いんです。そこにアクションやアドリブを入れていくのは大変でした」

――そのほか、テイストなど日本の作品と違いを感じたところはあったのでしょうか?

「その点は、普段とそれほど変わらなかったです。ただ、劇中で描かれている情景や文化は僕にとってはなじみがないものであっても、中国の方にとっては、当たり前で、“知ってる、知ってる”と感じられるもののはず。そこを理解して、感覚を近づけられるよう、意識はしていました」

――アフレコで楽しかったところはありますか?

「チュンがライオンのまねをするシーンは、やっていて楽しかったです(笑)」

――“獅子舞”ということで、劇中ではライオンと猫が対比されています。花江さんにとって、それぞれのイメージは?

「ライオンの方が強いイメージはありますよね。猫はかわいかったり、ちょっとのんびりしていたり。ただ、猫が弱いイメージは、そんなに僕の中にはありません。“ライオンと比べた時に”という感じですよね」

――チュンが獅子舞を始めるきっかけになるのは、同じ名前のヒロイン・チュン(桜田ひより)との出会い。冒頭でさっそうと登場した彼女が見せる獅子舞は鮮烈です。

「少女・チュンは少年・チュンを導いてくれる人物。彼女は純粋に獅子舞が好きなんだけれど、ある事情から別の道に行かなきゃいけなくて、その現実を受け入れながら大人になっていっている少女です。何かを犠牲しながら進んでいっているところは、少年・チュンよりも少し先に行っている存在です。一方で、彼女は彼にぜひ獅子舞をやってほしいと思って、夢を託している。そうやってお互いによい作用をもたらしている関係なんです」

――少女・チュンの吹替を担当しているのは桜田ひよりさんですね。

「少女・チュンは獅子舞をやっている時は本当に力強くて、すごい動きを見せます。一方で、獅子頭を脱いでしゃべったら、年相応の女の子。まだ幼さが残っていて、ちょっと危うさもあるような…。そういうギャップが桜田さんのお声でより際立っていましたね」

――チュンと獅子舞に打ち込むのは、同じく両親が出稼ぎに行っているマオ(山口勝平)、ワン公(落合福嗣)。3人は強い獅子舞チームにバカにされながらも、都会・広州で開かれる大会出場を目指します。

「3人とも周囲からはいろいろな言葉を投げつけられていますし、それぞれコンプレックスも抱えています。踏みつけられて、虐げられて、折れそうになるけれど、それでも諦めないんです。団結して、“頑張ろう”と進んでいく。支え合える仲間は素晴らしいなと思いましたね」

――その3人に獅子舞を教えるのが、チアン(山寺宏一)。チアンはかつて獅子舞の名手として知られていましたが、今は辞めてしまい、妻のアジェン(甲斐田裕子)と塩漬け魚を売っています。当初は、チアンが子ども達に獅子舞を教えることを快く思っていなかったアジェンですが…。

「チアンが獅子舞に集中できるよう、アジェンは配達を1人でこなすようになるんですよね。配達に行く前に、アジェンが『獅子舞を辞めさせたこと、後悔している』と言い、その背中に向けてチアンが『愛してる!』と言う。あのシーンはグッときました。この物語では、それぞれが問題を抱え、それを乗り越えながら成長しているんです。そういう経験をされている方は多い…というか、おそらくみんな、そういう経験をしていると思うんです。だから、自分を投影しやすいんじゃないでしょうか」

――ラストで、少年・チュンはある“高み”を目指します。ちなみに、花江さんが登ってみたい高みは?

「物理的な高みですよね。高い所は平気ではありますが…。中国に、確かガラスを使った橋がありますよね。あの上には、ちょっと立ってみたいですね」

――最後に…、身近な方にこの作品をすすめるとしたら?

「“獅子舞”がテーマのアニメって、絶対に聞いたことがないと思うんですよ。例えば『異世界に行って、無双する話だよ』と言われたらどんな作品か思い浮かぶけれど、獅子舞だとそれがない。だから、『獅子舞で全国制覇を目指す話だよ』みたいな感じでしょうか(笑)。キャッチーな言葉で興味を持ってもらって、まずは見てもらいたいですね。見たら絶対に面白いので。それと、本当にCGがきれいなんです。獅子舞の大会のシーンでは、客席にいるお客さん1人1人が違う動きをしているんですよ。ぜひ、劇場の大画面で見ていただきたいですね」

【プロフィール】

花江夏樹(はなえ なつき)

6月26日、神奈川県生まれ。B型。『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』(フジテレビ系)、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」Season2(TBS系)、「山田くんとLv999の恋をする」、「Opus.COLORs」(ともにTOKYO MXほか)などに出演中。

【作品情報】

「雄獅少年/ライオン少年」
5月26日全国ロードショー
配給:ギャガ

21年に中国で公開され大ヒットした作品の日本語吹替版。中国の片田舎で暮らす少年・チュン(花江)が、同じ名前の少女・チュン(桜田)の獅子舞バトルを見たことをきっかけに獅子舞に魅せられ、友人のマオ(山口)、ワン公(落合)と獅子舞バトル全国大会を目指す。

【プレゼント】

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応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:5月10日正午~5月17日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」5月19日号(P90)をご覧ください。
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取材・文/仲川僚子 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/fringe スタイリング/村田友哉(SMB International.)

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