土俵割れても心一つ 飯田高相撲部

高校相撲金沢大会に向け地震に負けず稽古に励む飯田高相撲部=9日午後5時40分、珠洲市野々江町の緑丘中屋外相撲場

  ●21日、卯辰山で金沢大会

  ●白星で「地元に勇気を」

 飯田高相撲部が21日に県卯辰山相撲場で行われる北國新聞創刊130年記念・第107回高校相撲金沢大会(北國新聞社主催)に向けて汗を流している。練習場所である珠洲市緑丘中の屋内土俵は大きな亀裂が入って使用不能。部員はショックの色を隠せなかったが、「伝統の土俵で全力を尽くし、地元に勇気を届けたい」と団結し、急きょ屋外の土俵を手入れした。土俵は割れたが、心を一つにして白星を目指す。

 地震が発生した5日午後は練習が休みだった。激しい揺れで、自宅の壁がはがれ落ちたり、家具が倒れたりする被害を受けた部員もいた。部員の汗が染み込んだ室内の稽古場も大きな被害を受けた。直径4.55メートルある土俵の中央を貫くように、大きな亀裂が走っていた。

  ●過去に5度優勝

 飯田高は飯田中時代に4度優勝し、1948(昭和23)年の第32回大会に飯田高として栄冠をつかんだ。選手は週5日、高校の近くにある緑丘中に通い、中学生の相撲部員ともぶつかり稽古をして鍛えてきた。

 県高校新人大会覇者の梅木綾佑主将(3年)は土俵の惨状にショックを受け「憧れの金沢大会に出場できなくなるかもしれない」との不安に襲われた。だが、「土俵が割れたくらいで先輩たちの歴史を閉ざしたくない」と出場を呼びかけ、全員が団結した。

  ●復興願い四股に力

 土俵の修理時期は未定で、金沢大会には間に合わない。屋外にもう一つの土俵があるが、大会以外では使っておらず、表面が多少でこぼこしていた。手作業の突貫工事でなんとか状態を仕上げ、9日に本格的な練習を再開。四股には地を踏み鎮めるという意味もあり、部員たちは復興の願いもこめ、四股やすり足を繰り返した。

 梅木主将は身長170センチ、体重101キロで、押し相撲を展開するのが特徴。高木幹太さん(2年)と船橋竜乃祐さん(同)、波佐谷兼諒さん(1年)の3人が脇を固める。櫻井晃監督(63)は「相撲好きが多い珠洲の住民を勇気付けるような試合をしてほしい」と話し、快進撃を誓った。

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