米国の牛肉輸入関税上昇 今年も早期に低率枠消化

米国が日本産の牛肉にかける関税を引き上げたことが分かった。米国は日本を含む複数の国を対象に、年間6万5005トンの低関税輸入枠を設けているが、ブラジル産の輸入増で、2日に枠の全量が消化されたため。米国政府が現地時間8日に公表した資料で分かった。日本産の牛肉輸出には逆風となる。

この枠は日本やブラジル、欧州の一部の国などが利用している。同資料によると、2日午後8時ごろに全量消化となった。関税は枠内では従量税で1キロ当たり4・4セント(日本円で6円程度)と低かったが、今後は年末まで従価税で26・4%となる。

1月からの4カ月余りでの枠の全量消化は、ブラジル産の大量輸入が主因だ。同国産は干ばつの影響で生産が落ち込むオーストラリア産の代替として米国内で引き合いが強まり、昨年、輸入が急増。以来、大量輸入が続いている。

農水省によると、ブラジル産はハンバーグ向けのひき肉など低価格帯が中心だ。一方、日本はサーロインなど高価格帯の部位の輸出が多いため、枠超過による関税引き上げの影響が大きい。昨年も3月末に枠が全量消化されると、輸出量は5~11月は前年同月比で減少した。日本は低関税枠での輸出が増えるよう、政府レベルで米国に働きかけを続けている。ただ、「同じ枠を使う全ての国に関わる問題」(日本政府の交渉筋)のため、協議は難航しているもようだ。

輸出業者、対応急ぐも先見えず

米国が設ける2023年の牛肉の低関税輸入枠が早くも消化されたことを受け、日本国内の輸出業者の間では、高関税への切り替えを見越した対応の動きが出ている。一方、「2年連続で低関税枠が早期に埋まってしまい、実務的には混乱が生じる」(輸出業者)との声もあり、好調な和牛輸出への影響も懸念される。

米国向けの輸出を強化する大手食肉メーカーは、現地での流通価格を抑えるための低価格部位の提案や、伸びが大きいアジア圏の新市場の開拓などで輸出量の維持を目指すという。

「米国では、高価格帯のステーキハウス向けが中心で、価格が高かったとしても買うという実需が多い」(輸出業者)として、高関税に切り替わることによる輸出数量への影響は小さいとの見方もあるが、今後の動向は不透明だ。

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