「水のないプール」といえば1982年に公開された日本映画のタイトル。この作品とは無関係だが、「水のないプール」が有田町に実在する。同町岩谷川内の猿川渓谷の上流、陶器市でおなじみのメインストリートから歩いて行ける距離だ。
とはいえ、なぜ町外れの渓谷にこんな立派なプールが。長さ50メートル、深さも2メートル近い。9コースに飛び込み台も備える。
有田町によると、水泳の普及のため、合併前の旧有田町が国有林を借り造ったという。当時は水泳大会も開催されにぎわったが、老朽化に伴って維持が難しくなり、平成以降は「水のない」状態となったらしい。
当時中学生だった50代男性は「深くて足がつかないから、ひたすら泳いだ。川の水だったから冷たくてねえ」と懐かしむ。
一帯は、ダークな同名映画の雰囲気はみじんもない。耳を澄ませば、当時の子どもたちの歓声が聞こえてきそうだ。(写真と文・中島克彦)