永峰咲希・再生までの道のり Lessonインタビュー後編「再現性の高いドローへ」

ラグが生まれてフトコロを生かす(撮影/落合 隆仁)

長らく優勝から遠ざかってきたメジャーチャンピオン・永峰咲希が、4月のパナソニックレディースで、約3年ぶりに優勝争いに絡んだ。昨シーズンから大幅にスイングを改造し、さらなるブラッシュアップを行ってきたという永峰。目澤秀憲コーチとともに取り組んできたその改造のテーマは、「ドローを極める」ということ。具体的にどんな取り組みをしてきたのか、今年のオフに彼女の地元・宮崎で取材した中身を紹介していこう。後編は目澤コーチも登場。(後編)

ひざを改善したら2個やることが減った

―では具体的に、安定したドローを打つにあたって、どんな改造を行ってきたのか教えてもらえますか?

永峰:前回ひざの話をしましたが、去年まではアドレスでひざを締めちゃって、その結果バックスイングでひざが伸びちゃっていました。ロックしたままクラブを上げると、うまくターンできなくなっちゃう。今はお尻を使う感じでひざも開いてアドレスできている。そうすると、バックスイングで大きくターンができて、今までより肩も入ってトップも深い位置にいける。その結果、下ろしてくるときにラグ(タメ)が作れるんです。左にも乗れるし、頭を残せてインパクトできて、何よりドローが打ちやすい。今まではラグがなくてインパクトで詰まるケースが多かったんです。

ひざが安定したことでアドレスも変わった(撮影/落合 隆仁)

―全てはひざが原因だった?

永峰:そうですね。ひざを直したことで2個ぐらいやることが減った感じがします。トップを深くするのとラグを作るという両方ができるようになったのも、ひざの動きを改善したから。悪いときは、ハーフウェイダウンから詰まってきて手が前にいっちゃって。その結果体を右に倒して、そのままいくと左にいっちゃうので右に振る。それで逆球が出て…。

―スイングだけ見直すのではなく、やはり体のトレーニングが必要だったと。

永峰:そうですね。今は体で打っている感じがあります。ゴルフの調子が悪いとやっぱり手で操作しちゃいますよね。手打ちだからか、去年は背中がすごく張っていたんですよ。背中痛いなーって。軸が左に倒れるように上げて、ダウンスイングで一回突っ込んで、さらに今度は右に倒れるというように余計な動きが1、2個ありました。今は背中の張りもなくなって、ほんと上げて下ろすだけで、ワンピースで振れています。腕を使わなくても当たるし、安定したドローに近づいていると実感しています。

クラブを上げる位置の確認(撮影/落合 隆仁)

―飛距離も出ていると聞きました。*ここから目澤コーチ登場

目澤:高木(紀史)トレーナーとも同意見だったのですが、「体の中心からじゃないとパワーは出ない」ということ。肩甲骨も、骨盤も、体の中心に寄っていかないと大きなパワーを出せないですし、末端までそのパワーを伝えられない。関節のポジションがいいところに入り、筋肉がいい動きができてようやく、回転軸も小さくなり体の中心が安定します。結果、振るスペースが生まれる。昨年までの永峰プロは体を反りながら手を使っていた。そのときは軸の位置は左側でリバースピボットのようになって、そうすると背中も張るし、腕も張ってきます。プロはアジャストしてそれで当てることができちゃうから、結果けがになるまでやってしまうんです。

―今は体の中心に軸がくるようになった?

目澤:そうですね。今は体の中心軸でシンプルに回れていると思います。軸が中心にあれば、バックスウィングでも右に乗れるし、トップも深くフラットにも上がりやすい。そのまま下半身から切り返してくれば、クラブはインサイドからくるし、タメも作れます。でもそれもトレーニングを踏まえた今の体の状態だからできることなんです。

背中の反りもなくなり右サイドを使える(撮影/落合 隆仁)

―永峰プロ、スイング面で他に修正した部分はありますか?

永峰:テークバックで体の正面にクラブを上げるというのは分かっていたんですが、フォローで体の正面から外れやすかったので、そこの改善に取り組みました。ドローを打ちたいのにどうしてもクラブ軌道がこっち(体の左)になる。「フォローでも体の正面にクラブを振る」、その考えがなかったんです。

―今までは振る方向が左過ぎた?

永峰:そもそも振り抜く方向は無意識でした。

体の正面にクラブを振っていく(撮影/落合 隆仁)

目澤:永峰プロは、元々フェードヒッターで上から潰して左に振るのは得意でした。穴に沈んでいるようなボールを真っすぐ飛ばす練習をやったとも聞きます。それはフェード習得にはすごくいいこと。左に振るのに慣れているので、無意識に振ると自然と左に振り抜きやすかったのかもしれません。

永峰:今は振り抜く方向も考えられているので、(ダウンスイングで)ここに下ろせているんだから、こっちに振り抜こうよって思ってやっています。振り抜く方向を変えると、不思議なもので、今までに比べたらフォローで回っていないような感覚なんです。今までビュワーんって回っていたのが、押すようになったというか、インパクト後に終わっちゃうというか…今はそんな感じです(笑)。

永峰が目澤コーチと高木トレーナーと取り組んできた「安定したドロー」は、完成に近づきつつあるようだ。永峰が復活優勝する日はもうすぐそこまで来ている。(取材・構成/服部謙二郎)

協力/UMKカントリークラブ

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