放っておいたままではお金がおりないことも! ガン保険の落とし穴

’00年ごろまでのガン保険は診断一時金+手術・入院保障が中心で、再発などではお金が下りないことも! 今の時代に必要な5項目を要確認だ。まずは“危ない”4つのケースから検討していこう。

■ケース1:再発したガンには保険金が支払われない

「男性Aさん(56)は、胃ガンと診断されました。幸い、20代のころに加入していたガン保険で手術給付金と入院給付金合わせて70万円を受け取り、無事に治療を終えて社会復帰しました。ところが3年後に肝臓に転移。すぐに保険会社に連絡すると『お客さまの保険は再発したガンには給付されません』とまさかの回答。絶望した表情で相談にみえました」

と話すのは『NEWよい保険・悪い保険2023年版』の共同監修などで“保険のプロ”としておなじみの長尾義弘さん(ファイナンシャルプランナー)。

さらにこんなケースもある。

■ケース2:手術をしないと保険金が支払われない

「女性Bさん(60)は、大腸ガンと診断され、転移がみられるということで手術ではなく、抗ガン剤治療を勧められました。さっそくガン保険の保険金を請求したところ『手術をしない』ことでメインの手術給付金が支払われず。何のためのガン保険かと裏切られた思いでいっぱいとのことでした」(以下、コメントは長尾さん)

万一のために加入した保険なのに、ガンになっても満足な保障が受け取れない。どうしてこんなことが起きているのだろうか?

「ガン保険が登場したのは’74年。当時のガン治療は手術がメイン。そのため’00年ごろまでのガン保険は診断一時金+手術・入院保障が中心で、再発のガンや抗ガン剤、放射線のみの治療はカバーされていない商品ばかり。正直なところ、’00年以前に加入したガン保険は時代遅れであまり役に立たない保険といえるでしょう」

それでは’00年以降のガン保険は万全かというと「思いがけない落とし穴がある」と、長尾さん。

■ケース3:ステージ0のガンには支払われない

「女性Cさん(39)は異常なおりものが続き、婦人科を受診。子宮ガンの検査を受けたところ、上皮内ガン(上皮内新生物)と診断されました。Cさんはガン保険に入っていたので保険会社に連絡すると『上皮内ガンはステージ0のガンなので保障されない』との回答。やむなく自費で手術を受けました」

Aさんの場合、10年前に入ったガン保険で、上皮内新生物は特約を付けていないと保障されないタイプだったのだ。こうした“危ないガン保険”の例はほかにもある。

■ケース4:自由診療の治療費は保障の対象外

「男性Dさん(56)は膵臓ガンと診断を受け、ガン保険を受け取り、つらい抗ガン剤治療を乗り越えて元気になりました。ところが2年後、肝臓、リンパ節に転移しているのがわかり、医師から最新のホルモン剤治療を勧められたのです。この治療は自由診療で自己負担は100万円を超えるとのこと。Cさんが再度、ガン保険の会社に連絡すると『自由診療は保障の対象外』という回答に愕然。近年は自由診療に対応した特約のあるガン保険も増えているので、それに加入していれば、安心して自由診療が受けられたのにと後悔していました」

このように、いざというとき、肝心の保険金が支払われないという事態を防ぐためにどのような注意が必要なのだろうか。

「今加入しているガン保険の保障の範囲を再確認してください。

【1】診断給付金が無制限に出るのか
【2】毎月給付金が受け取れる抗ガン剤治療給付金、放射線治療給付金があるのか
【3】自由診療、患者申出療養などに対応しているのか
【4】ステージ0のガン(上皮内新生物)の保障はあるのか
【5】通院給付金は付いているのか

今は医療の進歩から、ガンになっても共生して長生きを目指す時代。この5項目はそのために必要な保障です。自分がどんなガンになるかはまったく予想できません。’00年以前のものは見直しを。それ以降の保険でも、この5項目をカバーしていない場合は見直しを検討してください」

「転ばぬ先のつえとして頼りになるのが、診断給付金を何度でも受け取れること。これを基準に手厚い保障のものを選びました。加入し直すときは、ガン保険は契約後3カ月間にガンが発見されても保障されないため、必ず古い保険の解約は新たなガン保険を契約してから3カ月後にすることです」

あなたも自分のガン保険をチェックして、不安なところがあれば見直してみてはいかがだろうか。

【PROFILE】

ながお よしひろ

ファイナンシャルプランナー。著書に『NEWよい保険・悪い保険』シリーズ(徳間書店・共同監修)など多数。

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