ここ数年不漁に悩まされた駿河湾特産の「サクラエビ」。2023年の春漁では、一転、初日からこれまで豊漁が続いている。近年稀に見る豊漁の理由は?
4月初旬から解禁されているサクラエビ春漁。初日は、潮の状態が良く、これまでの漁獲規制の成果もあり、水揚げは2022年の約0.9トンをはるかに上回る、約40トンと近年稀に見る豊漁となった。
過去の漁獲量の年間推移をみると、2018年から激減し、2020年には128トンまで落ち込むなど、ここ数年、不漁に悩まされてきた。しかし、2023年はこれまで順調で、5月9日の8回目の漁では、由比港で33トンのサクラエビが水揚げされた。
これまでの安定した漁獲量に漁業関係者は?
(静岡県桜えび漁業組合 実石正則 組合長)
「春漁は自分も不安だったが、順調にとれて資源もある程度回復している」「また気候変動などで、いつ不漁になるかわからない」「みんなが大変な思いをしないよう、できるだけ元の資源を残さないといけない」
2023年のこれまでの総水揚げ量は、約206トン。春漁はまだ、約1カ月の期間を残すが、すでに2022年の春漁を超える漁獲量に。
不漁の時には、1ケース15キロ当たり10万円を超えていた価格も、2023年は1ケース3万円台に落ち着いている。
安定した漁獲量により、スーパーマーケットでもサクラエビの品揃えが豊富に。
(記者)
「こちらの鮮魚コーナーには、今朝競り落とされたばかりの生のサクラエビがたくさん並べられています」
店には生サクラエビのほかに、釜揚げや加工品も並んでいる。価格も手が届きやすくなり、客からは喜びの声も。
(買い物客)
「久ぶりに食べようかなと思って、あってよかった」「きれいでおいしそうだなと思って天ぷらにしようと決めた」
サクラエビの需要が高まり、昨年同時期と比べて客足も増えたという。
(田子重西中原店 増田克己 店長)
「今年の方が安く提供しているので去年より売れている。3割~4割ほど安く販売している」「今しか食べられない旬のものなのでお客様の反応もいい」「たくさん販売できてお客様にも喜んでもらえるので良かったと思う」
“海のルビー”と呼ばれる駿河湾特産のサクラエビ。記録的な不漁から一転、豊漁となった理由について、専門家は「漁獲規制」と「豊富なエサ」が関係していると説明した。
(静岡大学 カサレト研究室 鈴木利幸 特任助教)
「駿河湾にたくさんエサがあったことは、昨年の秋の段階ではっきりしていたため、たくさんエサを食べられた可能性が一つある」「これまで漁業関係者が禁漁区を設けたり、漁業規制を行っていた。次の世代のエビを守るということになるため、サクラエビの資源回復に良い影響があったのではないか」
サクラエビの大きさなどを測る調査では、2022年より大きなサクラエビが多く確認されたという。順調な成長が見られた理由に「産卵時期」と「水温」が影響した可能性があると見られている。
(静岡大学 カサレト研究室 鈴木利幸 特任助教)
「サクラエビの産卵の時期がこれまで少し後ずれしていたことが観察されているが、本来の時期に戻って成長がしっかりできた」「サクラエビがエサを食べるときに深海から上がってくるが、表層の水温が暑すぎるとエサを食べられない。春・秋の季節に駿河湾の水温がサクラエビがエサを食べに来られる、アクセスできるような水温であったということが予想される」
春漁は6月9日まで。漁業組合では、豊漁を期待する一方で、継続的な漁業を目指すため「自主規制」も続ける方針だ。